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コードネームはBoo! (2)
林原力志

 世の中の不況は長引きすぎて、時節の挨拶にもなろうという昨今だ。
 何のとりえもなかった俺を新卒で雇ってくれる会社はなく、一年間のアルバイトを経て正社員にしてくれた建設会社は先月つぶれた。
 6年間の建設作業員としての経験は新たな人生を特に彩ってくれることはなさそうだった。

 毎日、ただ働いていただけだったので、未だにとりえはなし。
 運転免許以外は資格も持っておらず、職歴は思い切りガテン系と来たもんだ。
 失業保険で食いつなぐ気のなかった俺は晴れてハローワーク通いになったわけだが、これがまた苦痛しかない通い先となった。

 募集を見つけても採用には届かない。
 体よく面接まで行ければまだいい方で、書類審査でたいていの企業は俺を不必要と判断するらしい。
 丁寧に書いた履歴書を持って面接に行ったところで結果は変わりナシ。
 面接官のデスクには60センチはあろうかという履歴書の束がそびえ立ち、名前を聞くのもそこそこに「経験は?」と来る。

 体力にはそこそこの自信があったが、力仕事をずっと続けるのはキツイと思い、事務や営業の仕事を探したのが間違いだったのか。
 経験などあるわけない。

 「経験はありません」と答えれば、間髪いれずに「結果は追ってご連絡します」と返ってくる。
 最近じゃ、初対面の人間にため息をつきながら「使えない奴だ」と言わんばかりの態度をするのがビジネスマンのマナーなのか?
 さすがに一度も面と向かって言ったことはないが、名前だけ聞かれて帰されることになった時にははっきりと言葉にした。

 「ハガキ代にしろ電話代にしろ勿体ないから連絡はいらない。どうせ不採用だろ? あんたもふんぞり返っていられるのは雇われてるウチだぜ。再就職はキツイってのがそのうち分かる。俺より年食ってんじゃ余計にな」

 鳩が豆鉄砲くらってるような顔にガンくれて、ドアは盛大に叩きつけて出て行った。
 ハローワークに苦情が行こうと構うものか。
 どうせ誰も雇わない割にはこの先、何週間も求人は出すはずだ。
 「当社の希望に見合う人材はいなかった」ってわけだ。
 大方、労働基準監督署にとやかく言われるのが嫌で雇用体制は整えていますってジェスチュアをしてるだけだろう。
 俺に面接に来いなどと言う酔狂な企業はこの程度のところばかりだ。

 交通費だけがただ減っていった。


(3)に続く

2010/07/23 初版

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