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百物語 二十一の語り
鈴鳴零言

 さて、今回は海のお話です。

 ◆ ◇ ◆

 夏休み───。
 皆で海に遊びに来た。
 ここの海岸にはちょっとした名物がある。
 砂浜から少々離れたところに崖があり、天然の飛び込み台のようになっているのだ。
 ルールを守れば、安全に楽しめる場所のため、口コミで人気があった。

 皆で飛び込んだり、飛び込むところの写真を撮ったりと楽しい時間を過ごす───。

 ───結構な時間を遊び、疲れが溜まってきたところで、一旦宿に引き上げようということになった。
 何人かが崖の下から戻ってきていない。
 少し待っていると、一人、また一人と戻ってきた。
 だが、最後の一人が、いくら待っても戻ってこない。

 心配になって、崖下の上がり場になっているところへ見に行く。
 だが、上がり場には見当たらない。
 同じように飛び込みに来ていた人に訊いてみるが、やはり見ていないとのことだった。
 考えてみれば、結構前から姿を見ていないことに気づく。
 皆、飛び込むローテーションで、たまたま姿を見ていないだけだと思っていたのだ。
 最悪の事態が頭の端によぎりつつあった───。

 その後、捜索を依頼し、捜索本部と宿で待つ者に分かれた。
 数時間後、発見の連絡が届いた。
 ───想定していた、最悪の連絡だった・・・。

 後日、仲間の一人から、集まって欲しいという連絡があった。
 皆が集まると、呼び集めた当人は何とも言えない顔をしている。
 話を聞くと、葬儀が終わった後、写真を現像してもらったのだという。
 亡くなった仲間の最後の写真だったからだ。
 とりあえず、これを見てくれ───と、一枚の写真を取り出した。
 皆、一瞬、その写真がどこで撮られたものなのか、よくわからなかった。
 それくらい妙な写真だった。

 亡くなった仲間が、崖から飛び降りたところを撮った写真だった。
 崖下の海まで、広い範囲を撮っている。
 だが───飛び込む先の海は、血のように真っ赤な色をしていた。
 そして───その赤い海のいたるところに、何か白い棒のようなものがいくつも突き出している。

「その白い棒のようなもの───腕・・・だよな?」

 この写真、現像してきた中には入っていなかったのだという。
 写真を一枚一枚を見ていて、撮ったはずの一枚が足りないことに気づき、ネガを確認すると番号が一つ抜けていた。
 写真屋に確認すると、こういう写真は渡さないようにしているんですが───と、念を押されてから、ネガとこの写真を渡してもらえたとのことだった。

「あいつ・・・、この腕に引き込まれたのかな・・・」

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 水に関係する怪談の中で、海面や湖面、池や沼などから突き出ている、白い腕や手の話は定番の一つだと思います。
 その腕に掴まれると、水の中に引きずり込まれてしまう───そんなお話です。
 この話、水辺だけでなく、山でも派生系があります。
 異常に長い白い腕が生えていて、それに捕まると事故に遭ってしまうということです。

 海にまつわる言い伝えに、よく聞くものがあります。

「お盆の時期に海に入ってはいけない。死者にあの世へ引きずり込まれる・・・」

 この言葉には、自然の危険に対する警告が多分に含まれていると思います。
 「暑さ、寒さも彼岸まで」などと言うように、時節の名称がある時期は、何らかの変化がが大きくなるときでもあります。
 気温や水温、潮の流れも変わることでしょう。
 今では認識されている、離岸流なども危険の一つです。

 体力のある人でも、自然の前では抵抗することもできず、そのまま事故に───ということも少なくありません。
 山や海などに遊びに行ったとき、自然の脅威を忘れませんように・・・。

 では、これにて二十一の語り「白い腕」了。


二十二の語りに続く

2010/08/17 初版




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百物語 二十二の語り
鈴鳴零言

 さて、これもまた海のお話。

 ◆ ◇ ◆

 これは4人で海に遊びに行ったときのこと。
 今になってみれば、最初から予兆はあったのだ───。

 行きがけに海岸沿いにある食事処で食べていくことにした。
 お品書きと水が運ばれてくる。
 だが、水は3つしかなく、1人の───Cのところだけ水がなかった。
 水を1つ追加してもらい、注文する。
 注文が届く。
 しかし、しばらくしてもCの注文が届かない。
 訊くと、すみません。忘れていました───との返事。
 水のこともあり、おっちょこちょいなのか?───と密かに談笑する。
 やがて遅れていた注文が届くが、どこに置くか迷っているようだった。
 他の3人はもう注文が届いているから、迷うことはないと思うのだが───Cを指すと、初めて気づいたかのように置いた。

 注文を受けた人が、なぜ何度もCのことだけ忘れがち───いや、認識していなかったのかもしれない。
 あの時には、すでにあいつの影は薄くなっていたのだろう───。

 海に着いて、皆で遊ぶ。
 ───いつしか、時間は夕方になっていた。
 宿に移動する時間だったが、Cが戻ってこない。
 もう一泳ぎしてくると言ってから、結構、経っている。
 Aが戻ってくるのを待ち、Bと先に宿に行ってチェックインしておくことにした。

 数時間が経ち、一体あいつらは何をやっているんだ?───となったところに、Aが転がるように戻ってきた。

「Cが死んだかもしれない───」

 AがCをずっと待っていたところ、水死体が上がったとのことで、付近にいた者に容姿などの連絡があったのだという。
 思い当たる場合、確認に来て欲しいとのことで、皆で遺体を安置してある警察署に向かった。

 結論から言うと遺体はCだった。
 確認を済ませ、住所など簡単な聴取を受けた。

 突然のことに動転していたが、時間が経って落ち着いてきたBが、あることに気づいた。
 Cの遺体は床に置かれ、ビニールシートが被せられているのだが・・・。
 なぜか、側に簡易寝台が置いてあるのに使われていない。
 そして、被せられているビニールシートが妙に縦に長い。
 まるで───そう、まるで人が2人、縦に並んでいるようだった。

 そのことを訊ねると、警官は少々困った顔を見せた。
 我々も判断に困っているのですが───曖昧な説明と共に見るかと訊ねられ、もちろんとばかりに確認することにした。
 シートをめくったそこには───Cの両足にしがみつく老婆の遺体があった。
 動揺しつつも訊ねると、1週間程前に行方不明となった老婆で、死亡推定はおそらく1週間前───だが、なぜ今日亡くなったCの足にしがみついているのかわからない、とのことだった・・・。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 果たして、彼はいつから死者に魅入られていたのか・・・。

 予兆と言えるもの───その一つに、心霊写真が挙げられます。

 身体の一部、または全部が白い靄で覆われている───。
 身体の一部が消えている───。
 写真に赤い帯状の光が映り込んでいる───。

 ───など、何かが起きる前触れや注意としては分かりやすいものでしょう。
 この語りのように、突然、影が薄くなるといった前兆は、ただの偶然、で済ませてしまうかもしれません。
 あなたの影は薄くなっていませんか・・・?

 では、これにて二十二の語り「影が薄い」了。


二十三の語りに続く

2010/08/19 初版




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百物語 二十三の語り
鈴鳴零言

 さて、これは派生系が有名なお話。

 ◆ ◇ ◆

 夏───。
 避暑地でコテージを借りた。
 コテージとは、平たく言えば山小屋だ。
 もちろん山小屋と言ってもピンキリなわけで、ここは家具類も設置してあり、ちょっとした別荘気分が味わえる場所になっている。

 避暑地の涼しく綺麗な空気を楽しむ散歩を終え、ソファーに座り込む。
 何をしようかと考え───管理所からビデオを借りてきたことを思い出した。
 一応、TVも入るのだが、ここは3チャンネルくらいしか入らないので、管理所でレンタルビデオもやっているのだ。

 いくつか借りてきたビデオテープのなかで、一つのビデオに目が向いた。
 他のビデオは普通のレンタル物なのだが、それはラベルに何も書いておらず、何が入っているのか分からないビデオだった。
 ビデオを選んでいるときに、棚の隅にあるのを見つけたものだ。
 結構、放っておかれていたのか、ラベルがくすんでいる。
 なんとなく興味を引かれ、聞いてみたのだが───昔、レンタルビデオを始める前に、TVを録画したものを暇つぶし用に置いていたことがあったから、その処分し忘れかも───ということだった。
 興味があるなら、料金は取らないので、ついでに何が入っているか見ておいてくれ───と借りてきたのだ。

 ビデオデッキにテープを入れ、再生する。
 しばらくノイズ画面が続き───そして、どこかの部屋が映った。
 すごく粗い映像だ。
 一応、カラーではあるが、モノクロに近い。テープが劣化しているのだろう。
 映っているのは、人が一人TVを見ているところを、その人物の背後の天井付近から撮っていると思われる、妙な映像だった。
 少なくともTVの録画ではなさそうだ。
 印象としては監視カメラの映像だろうか・・・。

 しばらくしても映像に変化が無いため、少し早送りしてみることにした。
 リモコンを取ろうと立ち上がったとき、映像に変化があった。
 TVを見ていた人物が立ち上がったのだ。
 お、変化が───と、そのまま見ていると、映像の人物はそのまま何をすることもなく、その場に立ち続けている。
 またか───と、ビデオデッキに近づく。
 すると、自分に合わせるように、映像の人物もTVに近づいた。

 さすがに何かがおかしいと感じる。
 粗い映像をじっくりと見ているうちに気づいた。
 この映っている場所、ここに───この部屋に良く似ているのではないだろうか?
 そして───この人物はもしかして───ゆっくりと手を上げてみる。
 自分に合わせて、映像の人物もゆっくりと手を上げていく・・・。
 恐怖を抑えつつ、映像でカメラがあると思われる位置を、振り返って見る。
 ・・・何もない。
 大きく息をついてソファーに座る。
 しかし、不意に気づいてしまった───いや、思い出してしまった。

 この映像は「ビデオの録画のはず」だということを・・・。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 これは「借りたビデオを見ると〜」というお話の派生系の一つです。
 一番、有名になったのは、某映画の中に出てくる「呪いのビデオ」ではないでしょうか。
 もちろん「呪われるビデオ」の派生系は、映画以前から見かけられました。まあ、古井戸は出てきませんが・・・。

 ビデオテープやカセットテープ、ビデオに写真といった機器には、この世でないものも記録することがある。
 それは果たして偶然なのか必然なのか・・・。

 では、これにて二十三の語り「ビデオテープ」了。


二十四の語りに続く

2010/08/20 初版




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百物語 二十四の語り
鈴鳴零言

 さて、今回はちょっとしたところにも接点があるというお話。

 ◆ ◇ ◆

 暑い夏───。
 昼寝でもしようかと、タオルケットを手に取る。
 冷房だろうと、扇風機だろうと、腹を冷やすのはよくない。
 あとは枕だ。
 普通の枕だと暑い気がする───ここはやはり、あの枕だな。
 お気に入りの藤編みの枕を探す。
 そういえばソファーのところだったか───思い出した通り、ダブルソファーの上に枕が置いてあった。
 枕を取ろうと、手を伸ばしかけ───その手が止まった。
 最初は違和感だった。
 藤編みの枕は、細かく編んだ形のものではなく、隙間の大きい編み方のものだ。
 その隙間に見慣れない何かがあった。
 それが何かは、頭では分かっているが───ありえないものだった。
 目───。
 藤編みの隙間から目が覗いていた・・・。

 ◇ ◇ ◇

 扉は閉めるか、開け放つか、どちらかにすること。
 特に良くないのは、中途半端に少しだけ開いていること。

 何故かって?
 気づいたやつが覗くからさ。

 どうしてって? そうだな・・・。
 おまえが暗い廊下にいるとする。
 ───で、襖か何かの引き戸が少しだけ開いていて、部屋の明かりが漏れている。
 気になるだろ・・・? そういうことだ。

 誰が覗くのかって?
 あの世のやつらだよ───。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 隙間は、あの世とこの世が繋がる、窓のようなものなのでしょう。
 特に、霊道と呼ばれるものに隣接していると、覗かれることが多くなるようです。

 語りの通り、戸の隙間や、物の隙間、他にも格子などでも話はあります。
 視線を感じて、そっちを見たら隙間があった。
 この世の者でない「誰か」が見ていたのかもしれません。

 今では普通に戸を開けていることも多く───また、風の流れを作るために、わざと戸や窓を開くこともあります。
 でも、覗かれるかもしれない、ということだけは忘れぬように。
 霊的にも、人為的にも・・・。

 では、これにて二十四の語り「隙間」了。


二十五の語りに続く

2010/08/21 初版




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百物語 二十五の語り
鈴鳴零言

 さて、これは日常の中に残されている謎の一つです。

 ◆ ◇ ◆

 ある時、国が道路標識のデザインを公募した。

 応募するべく、公園でデザインを考えていた人が、ある親子に目が向いた。
 スーツ姿に中折れ帽(いわゆるソフト帽)の男性と、赤い吊りスカートにリボンを付けた少女が、手をつないで歩いている。
 何かピンとくるものがあり、モデルになってほしい理由を話すと、男性は快く応じてくれた。
 その時は何も気づかなかったのだが・・・。

 デザインも完成し、応募も終えた後日───。
 テレビで行方不明の少女捜索の情報提供を呼びかけるニュースをやっていた。
 どうやら、誘拐ということらしい。
 少女や誘拐犯と見られる人についての特徴のところで、思わず、あっ、と言ってしまった。

 そう───。
 公園で出会い、モデルを頼んだ、親子と思っていた男性と少女だったからだ・・・。

 この応募に使われたデザインは当選し、今も「歩行者専用」の道路標識として使われている・・・。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 「歩行者専用」または「自転車及び歩行者専用」に使われている、道路標識にまつわる都市伝説の一つです。
 都市伝説とは言うものの、実際にその道路標識を見ると実際にあった話では? と思わせる、不自然なデザインであることに気づかされます。

 少女が男性の袖を引っ張っているようであり───、
 少女が手を握る男性から逃げようとしているようにも見える───。

 そんな感じの───見れば見るほど、少女の姿勢が不自然に思えてくる不思議なデザインです。
 普通に考えれば、少女もただの立ち姿で良いはずなのですが・・・。

 ところで、この標識のデザインは国際的な統一規格に基づいたものなんだそうですが、ドイツでは「男性と子供」ではなく「女性と子供」というデザインになっているそうです。
 これは「歩行者専用の道路標識は誘拐犯を連想させる」と、当時使用されていたデザインに関して問題視する発言を受け、デザインが変更されたためなんだそうです。
 気になった方は調べてみると良いでしょう。

 では、これにて二十五の語り「道路標識」了。


二十六の語りに続く

2010/08/23 初版




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百物語 二十六の語り
鈴鳴零言

 さて、これもまた日常の中に潜むお話。

 ◆ ◇ ◆

 深夜、マンションに帰ってきて、エレベーターに乗り込んだ。
 自宅のある6階を押してから、疲れた身体を壁に寄りかからせる。

 ぼーっ、とエレベーターの上昇感を感じていると、途中で4階のボタンが点いた。
 ああ、誰か乗ってくるのか・・・。コンビニかな・・・?───などと思っているうちに4階に着き、ドアが開く。
 ───誰もいない。
 ・・・? 階段で降りたかな? まあ、いいか・・・───開閉ボタンを操作し、ドアを閉じる。

 自宅に帰り着き、水を飲んで一息ついた。
 明日の予定などを確認し、ふと、さっきのエレベーターのことが思い出された。
 さっきはぼんやりしていたので気づかなかったが、明らかにおかしいことがあった。

「どうして、4階のボタンが点いた?」

 そう───。
 外からエレベーターを呼んだ場合、エレベーター内のボタンは点灯しない。
 エレベーター内のボタンは誰かが押さないと点灯しないのだ。
 あの時、エレベーターに乗っていたのは自分一人だった。
 もちろん自分は押していない。
 では、誰が4階のボタンを押したのだろうか・・・。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 自分一人で乗っているつもりが、実は見えない何かが一緒に乗っていた・・・。
 見えないものに対する恐怖を煽る、エレベーターにまつわる話の定番の一つです。

 これの派生系と言えるのは、「各階に止まるエレベーター」でしょうか。
 この話とは逆に、見えない何かがどんどん乗ってくる、といったものです。

 エレベーターは狭い閉鎖空間であり、乗ってしまうと行き場がありません。
 ドアの外が見えないタイプであっても、見えるタイプであっても、それぞれに違った恐怖が付き纏います。
 エレベーターに乗るときは、覚悟を決めたほうが良いのかも知れません・・・。

 では、これにて二十六の語り「エレベーター」了。


二十七の語りに続く

2010/08/24 初版




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百物語 二十七の語り
鈴鳴零言

 さて、今回は怖い目に出遭えると言われているおまじないを。

 ◆ ◇ ◆

 夜、就寝前に、部屋の四隅を見てから床につきます。

 しばらくすると───。
 霊が現れるなど、何らかの現象が起こるといいます。

 ◇ ◇ ◇

 夜、寝るとき、仰向けになります。
 そして、手を体から20cm離し、足を30cm開いて眠ります。

 怖い夢が見れるといいます。
 
 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 前者は「それだけ?」という感じがしますが、ある状況のお話を知っていると納得できるものがあります。

 視線を感じ、部屋を見回す───もちろん誰もいない。

 こんな状況のお話は割とあるわけですが、このとき、部屋の四隅を見ている可能性は高いわけです。
 気配を感じても、無視すれば何事も起きなかった。
 しかし───部屋の四隅を見てしまったために何かが起きてしまう・・・。
 普段、部屋の三隅までは見ていても、四隅までは見ていない───そんな日常の死角にある方法なのでしょう。

 後者もまたお手軽です。
 ヨガなどでも、「これが効くの?」という姿勢がありますが、なんでもなさそうな姿勢がリラックスを誘い、また逆に緊張状態を作り出す───そんな姿勢の一つなのだと思います。

 これらの方法を試しても、何も起きないこともあるでしょう。
 伝わるうちに手順の一部が抜け落ち、足りていない可能性もあります。
 しかし、方法の肝となる部分ではあるはずです。
 召喚術の類で言えば、送還方法に当たる部分が無いのかもしれません。
 それでもと言うのなら───試すのは自己責任です。
 それをお忘れにならぬよう・・・。

 では、これにて二十七の語り「就寝前に・・・」了。


二十八の語りに続く

2010/08/26 初版




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百物語 二十八の語り
鈴鳴零言

 さて、今回は車にまつわるものを。

 ◆ ◇ ◆

 ある女性が中古車ショップに寄った。

 並ぶ車の中に一台、値段も手頃な、赤い車があった。
 具合を確かめるため、試乗させてもらうことにする。

 試乗してところ、乗り心地も悪くない。
 予定通り、最後に高速走行を試して終わることにした。

 高速に入り、窓を閉めようとして気づいた。
 窓が1〜2cm程だろうか、完全に閉まらない。
 あとで言っておかないと───と思いつつ、そのまま走行確認を続けた。

 ───気づくと、対向車が妙にパッシングしていることが多い気がする。
 女性ドライバーだからだろうか・・・?
 それに後続車両の動きも何か変だ。
 妙にレーンチェンジをする車が多い。
 それと対向車と同様にパッシングするものや、クラクションを鳴らしていくものもいる。

 そのうち一台がパッシングの後、後ろについて走っていた。
 理由がわからず、少しずつ苛立ちが増してくる。
 SAがあったので入ることにする。
 ───すると、後ろの車も一緒にSAに入ってきた。

 車を停めると、ついてきた車の人が駆け寄ってきた。
 停めたら文句を言ってやろうというつもりでいたのだが・・・。

「車の屋根にしがみついていた人がいた。あの人はどこに?」

 思わず車を見返し、ふと、閉まらない窓が目に入った。
 まさか窓が閉まらなかったのは・・・。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 車やバイクなど、車両に関するお話の一つです。
 自分には視えず、周りからは見えている───そんな状況もあるのが、心霊体験の不思議なところです。

 中古車にまつわるものは、何かしらの念が残っていたりすることがあります。
 元事故車などだったりすると可能性が高くなるようですが、一概に言い切れないのが難しいところです。
 あなたも中古車を手に入れるときは、よく調べたほうがよいかもしれません・・・。

 では、これにて二十八の語り「閉まらない窓」了。


二十九の語りに続く

2010/08/28 初版




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百物語 二十九の語り
鈴鳴零言

 さて、今回も車にまつわるものです。

 ◆ ◇ ◆

 夜、車を走らせていた。
 時間的にもまだ車通りは多い。
 明らかに飛ばしている者、急いでいるのかそれなりに飛ばしている者、流れに沿って走らせている者───さまざまだ。
 自分は、いわゆるスポーツカーと呼ばれる類のものに乗っているが、特に飛ばしたい気分でもなかったので流れにまかせていた。

 しばらくして、自分の前を白い車が走り、それを追随するように走っていた。
 追随していることもあって、何となく前の車を観察していた。
 4ドアの普通の乗用車だ。乗っているのは1人。普段から乗っていると思える走りではある。
 そんなことを思っていると、トンネルに差し掛かった。

 トンネルに入った一瞬。

 ライトの明るさ、風景の変化───そういったものにより、目には入っているものの、一瞬だけ白い車から注意が離れた。
 気づくと、前の車の天井に、何か白い塊が乗っている。
 なんだ?───ちょっとした異常事態に認識が遅れた。

 それを人だと分かるまでに少し───。
 白い服を着た、長い髪の女だと分かるまでに少し───。

 天井に張り付いている女が動く。
 向きを変え、窓枠の方へと近づいていく。
 こちらに気づいたように、こちらを見る───ニヤリと笑ったような気がした。
 そのまま女は後部座席の窓から車の中に進入していった。

 その後、半分混乱した状態で、とりあえずパッシングした。
 何度かパッシングを繰り返す。
 トンネルを抜け、しばらくして車が止まり、男が降りてきた。
 自分も車を降りて駆け寄る。

「さっき後ろの窓から女が入っていったが大丈夫か!?」

 不機嫌そうな顔をした男の顔が、呆気に取られた顔へと変わる・・・。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 前回の語りと同様、「車の天井に人が〜」という派生系の一つです。
 この、車に何かが乗り込んでいった、という派生系が割合メジャーなものではないでしょうか。

 もっともシンプルなのは「車の天井に人が居て、いつのまにか消えてしまった」というものがあります。
 ただ、インパクトが薄いせいか、あまり話には出てこないようです。

 あなたが気づかないうちに何かが乗り込んできたら───。
 また、逆にそれを見てしまったとしたら───。
 その時、あなたはどういう行動を取るのでしょうか・・・?

 では、これにて二十九の語り「車の天井に・・・」了。


三十の語りに続く

2010/08/29 初版




▼二十一の語り / ▼二十二の語り / ▼二十三の語り / ▼二十四の語り / ▼二十五の語り / ▼二十六の語り / ▼二十七の語り / ▼二十八の語り / ▼二十九の語り / ▼三十の語り

百物語 三十の語り
鈴鳴零言

 さて、これもまた、ある車でのお話。

 ◆ ◇ ◆

 友人達4人で車に乗っていた。

 高速に乗り、しばらくしたところで、後ろに乗っていた2人が異変に気づく───正確には、Aが異変に気づき、Bがその不審な様子に気づいたのだ。
 異変に気づいたAは、いわゆる視える体質だ。
 Bはそれを知っているだけに、こっそりと訊ねる。

「どうかしたか?」
「───ううん。ちょっと気分が悪くなっただけ」

 ちらりと視線を助手席にやりながら答える。
 助手席に座ってるCは、この手の話が大の苦手だから、配慮したのだろう。
 その後、サービスエリアに入るまで、Aはサイドの窓を見ないようにしながらも、しきりに気にしていた。

 サービスエリアにて、先程のことを訊ねた。
 Aには、窓の外に長い髪の毛だけがなびいているのが視えていたのだという。
 また、その視え方が不思議で、1枚の窓からのみ視え、フェンダーを境に他の窓には視えなかったのだそうだ。
 視えるのは髪の毛だけで、身体などは視えなかったと付け加えた。

 気になるので、車を調べようかというときに、運転していたDが戻ってきた。
 先程のやり取りには気づいてたようで、Aが車の周りを見ている間に、Bが説明する。
 Aが、あっ、と声を上げた。
 何事かと側に行くと、Aは後ろのナンバープレートを指差した。

 ───そこには、髪の毛で見えなくなる程にぐるぐる巻きになったナンバープレートがあった・・・。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 このお話、髪の毛は2m程の長さが有ったそうです。
 そして、ナンバープレートに絡まっていた髪の毛を引っ張ると、まるで抵抗無く、するっと抜けたと言われています。
 高速走行の風圧に耐えるだけの絡まり方なら、そんな簡単には解けなさそうなものなのですが・・・。

 中古車のように、物に何かの因縁がある場合───。
 トンネルなど、その場所に何らかの因縁がある場合───。
 そして、偶然、何かに出遭ってしまう場合───。

 ───と、言ったように、車やバイクなどが関わるお話は現代の定番です。
 出遭わないのは、条件が揃っていないだけでしょうか。
 それとも、視えていないだけなのでしょうか・・・。

 では、これにて三十の語り「髪の毛・車編」了。


三十一の語りに続く

2010/08/30 初版

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