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百物語 七十一の語り
鈴鳴零言

 さて、これもまた、それなりに知られているお話の一つです。

 ◆ ◇ ◆

 修学旅行の夜。
 ある女子部屋ではいつしか怪談話が盛り上がっていた───。

 盛り上がっている中、一人が扉───木の引き戸を見つめていた。
 それに気づいた子が、どうしたの? と声をかける。
 その問いかけに一言───、

「来てる」

 ───と返した。
 その言葉に部屋の中は静まり返った。
 皆、扉を見ていた子が、いわゆる霊感があるというのを知っていたからだ。
 沈黙に対して、思い出したように付け加える。

「悪意は無いから・・・。興味を惹かれて来ただけ」

 部屋にホッとした空気が流れた。

「ねぇ。質問とかできないのかな?」

 一人が突拍子も無いことを言い出した。
 霊感持ちの子は少し考えて答えた。

「・・・簡単なことなら出来るかもしれないけど、やめたほうがいいと思う」
「悪意はないんでしょ。なら、大丈夫」

 何が大丈夫なのかはわからないが、言い出した子はやり方を考えているようだ。
 すぐに何かを思いついたらしく───、

「えーと・・・。“はい”ならノックを2回。“いいえ”ならノック1回で答えてください」

 ───と、扉に向かって語りかけた。

 コンコンッ

 返事があった。
 他の皆が顔を見合わせる。
 言い出した子は続けて質問を始めた。

「あなたは女性ですか?」

 コンコンッ

「あなたは社会人ですか?」

 コンッ

「あなたは学生ですか?」

 ───という感じに質問を続けていく。
 そして───、

「あなたは今、ひとりですか?」

 コンッ

「ふたりですか?」

 コンッ
「さんにん以上いますか?」

 コンコンッ

「んー・・・。では、人数分だけノックしてください」

 コンッ コンッ コンッ
 コンッ コンッ コンコンコンッ
 コンコンコンコンコンコンコンコンコンッ───

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 「修学旅行」の他、「学校の教室」、「自室の部屋」などの背景設定の派生系が主なところでしょうか。
 私はこのお話を最初に知ったのは「沖縄への修学旅行」設定のもので、他に付け加えられた設定として「ひめゆり学徒隊」を絡めたものでした。

 今回の語りと同様に、“何か”が誰なのかを明確にはしていませんでしたが、“おそらく”そうなのだろう、と思わせる語り口が印象に残っています。

 では、これにて七十一の語り「ノック」了。


七十二の語りに続く

2010/11/21 初版




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百物語 七十二の語り
鈴鳴零言

 さて、今回は山にまつわるお話です。

 ◆ ◇ ◆

 夜中、山道を一台の車が進んでいた。
 道は細く、舗装もされていない。
 ガードレールも申し訳程度に設置されているだけで、深い崖が隣り合っている山道だ。
 無論、車のライト以外に明かりは無く、崖下は底無しの闇に覆われていた。

 この道、車ではまず通らない間道なのだが、本道が事故で通行止めになっており、ここを通れば通行止め区間を迂回できるので通ってみることにしたのだ。
 しかし、進んでは来たものの、少々後悔気味だ。
 だが、もう後戻りするには少々遠く、そもそもターンできる場所が見当たらない。
 もし対向車が来たら、すれ違うのにも困ることだろう。

 走っていると、間の悪いことに霧が辺りを包み始める。
 霧はどんどん濃くなって、やがて道がはっきりしない程になっていく。
 山に生える樹木が道筋の頼りだった。

 より慎重に車を進めていると、不意に白い人影のようなものが車の前を横切る。
 反射的にブレーキを踏む。
 速度を出していなかったこともあり、少し砂利で滑ったものの車は止まった。
 慌てて車の外に出て、辺りを窺う。
 そして驚いた。
 車のすぐ前が崖だったからだ。
 あと少し止まるのが遅ければ崖に落ちていたかもしれない。

 ───少し落ち着くと、先程の人影らしきものを思い出した・・・が、どう考えても何も無い崖の上を横切ったとしか思えない。
 幽霊が助けてくれたとでも言うのだろうか・・・?
 辺りに何も無いので、車に戻ることにした。

 席に座って一息つき───、

『───落ちればよかったのに・・・』

 耳元で小さく、だが、はっきりとした声が聞こえた・・・。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 割と有名なお話だと思います。
 「車に乗っているのが2人」というパターンのほうが多いでしょうか。
 他には、人影が車の前を横切るのでは無く、「運転席と助手席の間を通り過ぎる」というものもあります。

 このお話、助けてくれたのかと思いきや、実は違った───というどんでん返しが肝と言えるでしょう。
 なかなか、こういったお話はありません。

 あなたが山道で車を走らせる必要があったとき、同じようなことが起きないとは限らないかもしれません。

 では、これにて七十二の語り「落ちればよかったのに・・・」了。


七十三の語りに続く

2010/11/25 初版




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百物語 七十三の語り
鈴鳴零言

 さて、これは最近ではほとんど見なくなったお話です。

 ◆ ◇ ◆

 ある日、中古で安くカーナビを入手することが出来た。
 まだ新品では少々手を出しにくい値段だ。
 それだけに半値で売られていたのを見つけたとき、即決で購入してしまった。

 仕事でも私用でも車で移動することが多く、その多くが初めての場所であることがほとんどだった。
 そのため、地図と睨めっこしていることが多かったのだが、カーナビを入手したことにより、その手間が大きく省けるようになった。
 1ヶ月程使ってみて分かったが、まだまだ精度は低いほうだろう。
 それでも、目的地近くまで誘導してくれるだけで、はるかに楽である。

 そして、問題なく今日の仕事も終わり、目的地にメモリーしてある自宅を呼び出し、帰路に着いた。

 カーナビの指示に従い、道を進む。
 辺りは街灯もまばらな、畑の間を通る道路だ。
 今日は少々、遠出になってしまった。帰りは大分遅くなるだろう───そんなことを思いながら、時計に目をやったとき───、

「目的地です」

 ───と、カーナビが告げる。
 もちろん、自宅ではない。
 それ以前に周囲は畑のみで、人家の明かりが遠い。
 予想してなかった言葉に車を一旦停める。
 カーナビを確認するが、誘導は終了している。
 間違って、違うメモリーを選択したのだろうか───いや、そもそもこんな場所を登録した覚えは無い。
 もう一度、メモリーから自宅を呼び出す。
 ルートを検索し、目的地までのガイドが示された。
 なんだったのだろう?───出発するべく、前を向く。
 そのとき目の端に入ったものがあった。

 真新しい電柱。それに取り付けられた街灯。
 そして───。
 街灯が照らす、電柱の脇に置かれた真新しい花束。

 思わずゾクリとくるものがあった。
 その後は問題なく帰宅することができた───。

 それ以降───。
 帰宅時、あの場所に誘導されることがあった。
 さすがにおかしいと、購入したところで聞いてみたが───ただの誤動作だろう、ということで落ち着いてしまった。
 そもそも中古品なので、強く言うわけにもいかない。
 その後、ある噂を耳にした。

 事故車から取り外されたカーナビは不具合が多い、と───。

 電柱の脇に置かれた花束が思い出され、ある推測が頭をよぎる。
 もしかすると、あのカーナビの前の持ち主はあそこで亡くなったのではないだろうか・・・。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。
 「ドライバーが死亡した車から取り外されたカーナビ」という、カーナビが普及し始めた頃に見かけたお話です。
 誘導されるのは「事故現場」「墓場」などで、事故が起きた時間に現場にたどり着く───というのが基本でしょうか。
 事故を誘うパターンもありますが、こちらはマイナーなようです。

 あなたの車に、妙な誤作動をすることがあるカーナビは付いていないでしょうか?
 もし、そのカーナビが中古で購入したものだとしたら・・・。

 では、これにて七十三の語り「カーナビ」了。


七十四の語りに続く

2010/11/27 初版




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百物語 七十四の語り
鈴鳴零言

 さて、今回はタクシー物のお話です。

 ◆ ◇ ◆

 タクシーが周りを林に囲まれた道を走っていた。
 お客を隣町に送った帰り道で、時刻は夜の11時を回っていた。
 林に入って、しばらく走ったところ───。
 手を上げる人影があった。
 こんなところで?───と思いつつも車を停める。

 お客は女性だった。
 ただ、その姿には少々、不審と言うか、不気味さを感じさせられた。
 白いコートにブーツ、これはいい。
 問題は色の濃いサングラスをしていることだ。
 もう辺りは真っ暗だ。そんな時間にサングラスをしていれば、怪しいと思うのが普通だろう。
 そんな考えを、ドライバーは“目の障害の場合もある”と考え、納得する。

 女性は車に乗ると、ぽつりと呟くように行き先を告げた。
 行き先は丁度この道をしばらく進むだけだが・・・そのあたりに何かあっただろうか・・・?
 この道、隣町への間道としては便利だが、開発が止まっているのか、この辺りに人家は見当たらない。

 車を走らせる間、女性に話題を振るが、「はい」「ええ」などの返事しか返ってこなかったので、会話が続かず、そのうち無言になってしまった。
 無言になると、最初に感じた不気味さが、再び顔を覗かせてくる。
 タクシーにまつわる怪異が思い出される。
 女性の霊というのは定番中の定番だ。
 こっそりミラー越しに女性を見る。
 ───映っていないということはなかった。
 目的地で消えている、なんてことは───。

「ここで結構です」

 不意の声に、思わず声を上げそうになるが、平静を努めて車を停めた。
 辺りは走ってきたところと同じく、何もないように見える。
 女性は料金を払うと、暗闇を気にすることなく、すたすたと林の中に消えていった。
 女性が歩いていったところを見ると、整地されていない道があるようだ。
 たぶん、奥まったところに家があるのだろう───そう納得して車を発進させた。

 後日───。
 再び、この道を似たような時間に通ることになったとき、あの女性がいた。
 相変わらずのサングラス姿だ。
 だが、2度目ということもあり、多少の余裕があった。

 車を走らせ、目的地で女性が降りる。
 女性の姿が見えなくなり、車を走らせようとしたが───女性がどこに向かっているのかが気になった。
 余裕が出てきたとはいえ、女性に怪しさを感じるのは確かだ。
 いくつかの言い訳と理由をつけて、女性を追ってみることにした。

 女性が進んだと思われる道を進む。
 辺りに街灯は無いが、幸い月明かりで十分に進める。
 一応、車に積んであった懐中電灯も持ってきているが、今のところ使わなくても良さそうだ。
 女性に気づかれたくないので、できれば使いたくない。

 しばらく歩き、かなり道路から離れたところに一軒の家が建っていた。
 たぶん、ここが女性の家なのだろう。
 普通の家があったことで、大きな安堵感を感じる。
 車に戻ろうとして、ふと、玄関の扉に目が行った。
 めずらしい扉だった。
 正確には鍵がめずらしかった。
 物語の中でしか見れなさそうな、向こう側が覗ける鍵穴のようだ。
 ふらふらと玄関に近づいた。
 覗いちゃまずいだろうという気持ちと、覗いてみたい気持ちが揺れ動く。

 ───好奇心が勝ってしまった。
 ええい、とばかりに鍵穴を覗き込む。

 ───?───

 最初、何がなんだかよくわからなかった。
 赤かったのである。
 鍵穴の向こうは、家具も何も無い、ただ真っ赤な部屋が広がっていた。
 我に返り、そそくさと車へ引き返す。

 その後───。
 タクシー仲間との会話で、その女性の事が話題に上った。
 夜中に立っているサングラスの女性は、それなりに有名だった。

「夜中、隣町との間道に立っている女性を知っているか? あの女性、いつもサングラスをしているが、一度だけ目を見たことがあるんだよ。その目を見て驚いたよ。真っ赤なんだ───」

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 鍵穴から部屋を覗いたとき、実は部屋の中から覗かれていた・・・。
 そんな独特の恐怖があるお話です。

 このお話は「街中で少女を人気が無い豪邸に送る」パターンも見かけましたが、背景設定を最小限に基本骨子だけで語られているほうが多いのではないかと思います。

 では、これにて七十四の語り「赤い目」了。


七十五の語りに続く

2010/12/01 初版




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百物語 七十五の語り
鈴鳴零言

 さて、タクシー物の定番と言えば・・・?

 ◆ ◇ ◆

 ある夜の事───。
 スーツ姿の男性が歩道を歩きながら、タクシーが通りがかるのを待っていた。
 しかし、車通りの少ない道路で、タクシーどころかファミリーカーすらほとんど通らない。
 さらに小雨まで降り出してきたので、男性は近くにあった電話ボックスで雨宿りしながらタクシーを待つことにした。

 しばらくして、一台のタクシーが通りかかる。
 男性は電話ボックスから出て、手を揚げる───が、タクシーは停まらなかった。
 なんだよ───と思いながら電話ボックスに戻る。
 電話ボックスに戻り、わずかに寒さが薄らぐと───よく見ていなかったが、すでに客が乗っていたのかもしれないと思い直した。
 雨と寒さで大分イラついているらしい。

 やがて、また一台のタクシーが通りがかった。
 今度は乗車表示を見て、客が乗っていないことも確認済みだ。
 ───しかし、タクシーは停まらなかった。
 予想外だったため、怒りよりも先に呆然としてしまった。
 そのまま明かりが去るのを見送ったところで、我に返る。
 小雨は相変わらず降り続いている。
 とりあえず電話ボックスに戻ろうと振り返ると、もう一台のタクシーがやってきていた。
 反射的に手を揚げる。
 ───タクシーはハザードを点けて停車した。

 自宅の場所を告げ、タクシーは走り出した。
 ようやく、といった安堵感から、男性は先程のことを愚痴にこぼした。

「───ああ、なるほど。それは災難でしたねぇ」

 運転手の理解は双方に及んでいるようだった。
 男性がそれに気づいたのを察したように付け加える。

「同じタクシー商売として謝罪と、一つ言い訳させてください。お客さんがさっき居たところ、あそこに居たことが、その理由なんですよ」

 男性は運転手の言い分に興味が沸いた。

「他の営業所では知りませんが───この商売、不思議な事の一つや二つは経験していないと一人前とは言えない、って言われています。もちろん、実在するかは別ですよ───で、タクシーの怪談話と言ったら、お客が幽霊だったっていう、有名な話があるじゃないですか」

 男性は一つの話に思い当たった。

「───そこで、さっきのお客さんにつながります。小雨が降る、夜の霊園近くで一人で立っている───まあ、逃げたくなる気持ちもわかります。お客さんが女性だったら私も少しは躊躇しますよ。乗車拒否は駄目ですけどね」

 車内に苦笑が生まれる。
 男性も思わず納得してしまった。
 さっき居た場所から少し行った所に、その手の噂話では有名な霊園がある。
 さらに「夜」「小雨」といった条件で、ついでに言えば「電話ボックス」もそうだろう。
 プロとしてはどうかと思うが、気持ちは分かる。

 自宅に着いたときには小雨は上がっていた。
 料金を支払い、車を降りる。
 タクシーを振り返ると───、

 そこにタクシーは居なかった。

 ───辺りを見回すが、走り去る影もない。
 わずか数秒で跡形もなくタクシーが消えてしまった。
 男性は軽く混乱し───そして落ち着いてくる。

 ───まさかタクシーのほうが・・・。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 霊園近くや電話ボックスなど、タクシーを呼び止める女性の幽霊の話は定番ですが、それの逆パターンと言えるものです。
 派生系では「お金が足りないのでちょっと待っててもらって、という間に消えてしまうもの」や、「時間経過がおかしなことになっている」ものが見かけられます。

 幽霊電車や幽霊バスといった、この世ではない乗り物に乗って、どこかへ移動する。
 神隠しなどにも繋がっていそうな、そんなお話の一面でもあるのでしょう。

 では、これにて七十五の語り「タクシーの話」了。


七十六の語りに続く

2010/12/05 初版




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百物語 七十六の語り
鈴鳴零言

 さて、今回は実在のスポットを幾つか紹介します。

 ◆ ◇ ◆

『羽田の大鳥居・大井競馬場のけやきの木』
 他の場所でも似たような話は見かけられる。
 共通する話は、撤去・移設をしようとすると不可解な事故・事件が発生するというもの。
 よく言われるのが、ブルドーザーやパワーショベル、クレーン車などが倒れるなどの事故が発生したり、担当した建設会社の人間が次々と事故・病気に遭う、といった感じである。
 担当会社が変更されても事故が続くため、その噂からすぐに請け負うところがなくなり、工事の話自体が保留・お流れになる、というのが顛末である。

 また、大井競馬場のけやきの木は、レース中、木に近づきすぎると事故が起こる、とも言われている。
 不可解な落馬や転倒といった事故の話が幾つか見られる。

 ◇ ◇ ◇

『緑ヶ丘霊園』
 霊園内にある池で子供が溺死したという話がある場所。
 親が慰霊塔として子供の銅像を建てたところ、その銅像が夜になると動き出すという噂が流れた。
 後に、その銅像は撤去されている。

 ◇ ◇ ◇

『ホテルニュージャパン』
 火災事故後、建物が壊されるまで、幽霊を見たという噂がよくあった。
 その多くは助けを求める人影が見えるというもの。
 分かりやすいところで言うと、向かって左側上層が挙げられる。
 人が落ちたところと言うほうが、当時の映像を知っていると分かりやすいだろうか。
 他には現場前に行くと、ぼそぼそとした声が聞こえることがある、という話もある。

 ◇ ◇ ◇

『自殺団地』
 関東三大自殺団地と呼ばれるものがあった。
 さすがに今では対策がされているので、自殺の話は聞かなくなった。
 ただ、自殺対策されているというのも不気味な話である。

 団地のほぼ全ての建物に、落ちたとき用のネットが張ってある。
 団地のほぼ全ての窓に、フェンスがはめ込まれている。

 ───というような対策がされているのだが、普通のビルやマンションを考えれば、それがどれだけ異常かがわかるだろう。

 さて、このうち二つの団地にはある共通点がある。
 それは「昭和47年に建てられている」ということだ。
 それが偶然なのか、それとも何かの条件になっているのか───謎である。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 羽田の大鳥居は、新滑走路を建設する話が出てくるたびに噂を聞いていましたが、最終的に建設できました。
 それは呪いが弱くなっただけなのか、それとも動かしても良いという“何か”があったのか・・・。

 ホテルニュージャパンは火災事故としては悲惨なものでした。
 当時のニュース映像は強烈だった印象があります。
 事故後、現場付近は焦げ臭い匂いがずっと残っており、今でも鼻が利く人は焦げ臭さが残っているといいます。

 自殺団地は、ある場所では30件以上、もう一箇所では20年ほどで100人以上が自殺しています。
 年に10人以上という時期もあったようで、一箇所の地域として考えても異常なことがわかります。

 今回の場所は心霊スポットというものではありません。
 超常的な“何か”がある場所・あった場所としてピックアップしてみました。

 では、これにて七十六の語り「噂の場所」了。


七十七の語りに続く

2010/12/09 初版




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百物語 七十七の語り
鈴鳴零言

 さて、今回は引き続き、実在の場所にまつわるものです。

 ◆ ◇ ◆

『白滝不動尊』
 境内に滝がある造りの不動尊。
 滝にまつわる話として───、

「滝の岩に仏の姿が浮かび上がっている」
「滝の上から、女性のすすり泣くような声が聞こえる」

 ───というものがある。
 また、この不動尊前にある坂───不動坂では女性の幽霊を見たという話がある。
 その幽霊が車の前を横切り、避けようとしての事故も発生している。

 ◇ ◇ ◇

『打越橋』
 自殺の多い橋の一つ。
 それを示すように、橋は金網を張り巡らしてある。
 ここは川に架かる橋ではなく、道の上に架かる橋───いわゆる立体交差の橋である。
 外見は陸橋というよりは、川に架かっている鉄橋であり、いわくを知っていると朱色に塗られた橋が一層不気味に見える。

 橋の下を走る道にはお地蔵様が奉ってある。
 このお地蔵様にも噂があり、夜になると表情が変化することがあるという。
 変化した顔を見てしまった場合・・・。
 ───といった噂である。

 また、この橋の手前には電話ボックスがあり、電話ボックスの定番と言える、女性の幽霊の噂も存在している。

 ◇ ◇ ◇

『虹の大橋』
 宮ヶ瀬湖に架かる、長さ330m程の大型の橋。
 宮ヶ瀬ダム完成前は湖面までの高さもかなりあった。
 自殺者の多さから、完成時には無かった金網が後に設置されたとされている。

 事故の跡も多い橋である。

 ◇ ◇ ◇

『湖岸道路(多摩湖・狭山湖)』
 事故の多い道路。
 直線での不可解な事故が多いらしい。
 事故を起こした者が語ったという内容には───、

「周りの森に視線が吸い寄せられる感じがある」
「幽霊が道に立っている」
「幽霊が飛び出してくる」
「突然、車が運転不能になる」

 ───といった、割と定番な噂がある。
 オカルト要素を抜くなら、錯覚や意図しないミスを引き起こしやすい景観や地形の場所と言えるのだが・・・。
 尚、両湖とも人造湖である。

 ◇ ◇ ◇

『華厳の滝』
 観光スポットだけに撮影回数が多く、それに比例して心霊写真が多く撮られている場所。
 但し、その多くは滝の飛沫による光の屈折や構図などで、偶然、心霊写真に“見えるだけ”というものがほとんどである。
 それでも説明の出来ない写真が存在するのは確かである。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 不可思議な現象が発生しやすい条件として「水場」が挙げられます。
 そして道では十字路・三叉路と言った「交差点」が挙げられます。

 白滝不動尊は幽霊を主体とした噂ですが、他は人為的な要素のみか、オカルトな話が後から追加されたといった場所になります。

 華厳の滝は「光と影の具合」「滝の飛沫による霧」といった条件もありますが、滝自体が流れる水なので、その陰影は常に変わり続けます。
 穴が三つあれば人の顔に見えるというフェイクに騙されず、“本物”を探し出すのは本当の意味で心霊写真の撮れる確率というのを表しているかもしれません。

 いずれの場所も前回同様に心霊スポットというよりは、超常的な“何か”がある場所・あった場所としてピックアップしてみました。

 では、これにて七十七の語り「噂の場所2」了。


七十八の語りに続く

2010/12/13 初版




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百物語 七十八の語り
鈴鳴零言

 さて、百物語を題材にしたものは、いろいろな媒体にあります。
 これもその媒体の一つです。

 ◆ ◇ ◆

 あるゲームソフトがある。
 そのゲームは百物語をベースにしたもので、全部で101話の話が収録されている。

 その収録されている101番目の話は、聞くと(ゲームプレイすると)霊障があるという。
 また、霊感の強い人は、この話を誰かから伝え聞いただけでも霊がやってくるらしい。

 この101番目の話は実際にあった話であるという噂がある。
 故に鎮められていない魂が怨霊となり、話を聞いた者へ無差別に霊障を起こすのだという・・・。

 ◇ ◇ ◇

 百物語をベースにしたソフトを発売した会社があった。
 そのゲームソフトについてのアンケートに、ある話がいくつか寄せられていた。

 「収録されている話が1話多くなることがあり、ゲームが暴走する」と───。

 本来、最後の話の後はスタッフロールへと続くわけだが、何らかの条件で次の話へ続いてしまうバグらしい。
 設定されていないところにプログラムが飛ぶのでゲームがまともに進行せず、暴走してしまうのだろう。
 寄せられた話や噂から条件を推測すると、途中セーブせずに最初から最後までゲームを進めるのが良さそうだった。

 何時間も時間をかけて検証を進める。
 全収録話をスキップせずに見るため、時間がかかるのだ。

 そして、ついに最後の話が終わる───。
 スタッフロールに進まず、次の話が表示され───ゲームは暴走した。
 画面に次々と滅茶苦茶に文字が表示され、サウンドも収録された音を滅茶苦茶に再生してノイズとなっている。

 画面は「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛・・・」の文字で埋め尽くされ、奇しくも「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛・・・」と聞こえるノイズになっていた。

 完全に暴走しているため、リセットすることにした。
 ───リセット後、システムデータが壊れていた。
 その壊れたデータを見て、スタッフは背筋が寒くなった。

 セーブされている内容を表示する場所は「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛・・・」の文字で埋め尽くされていたのだ・・・。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 百物語をベースにしたゲームソフトのお話です。
 あるテープやCDを聞くと霊障が発生するという類に含まれるものになります。

 ゲームにまつわるものでは、オカルトに属するものなら大概は何か噂がついて回っています。
 単純なところでは「異常に暴走・フリーズしやすい」や、都市伝説的なところでは「ソフト開発に関わった人に“何か”が起こっている」といったものです。

 ゲームソフトとは少々違いますが、ずばりそのまま「降霊実験」ができるフリーソフトというものもあります。
 実際に試したところ、「肩が重くなった」「金縛りにあった」「身の回りに不幸が相次いだ」などの報告例があるようです。
 こういったものを興味本位だけで試すのは、多かれ少なかれ危険を伴います。
 特に怪異を信じていない人、馬鹿にしている人ほど、予想外の霊障に遭う───というのも“ありがち”な話なのです。

 では、これにて七十八の語り「ゲームソフト」了。


七十九の語りに続く

2010/12/17 初版




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百物語 七十九の語り
鈴鳴零言

 さて、社会にはさまざまな問題がありますが、これはその一幕。

 ◆ ◇ ◆

 ある学校に、いじめを受けている生徒───Aが居た。
 例によって、と言うべきか、いじめを学校側は認知していない。
 そのいじめは、殴る蹴る、お金や物───といった肉体的、物質的なものではないので、目の前で見ても理解できないのだろう。
 始まりの理由はなんだったのか───今は“なんとなく気持ち悪い”で避けられている、という感じだった。

 そんな状態であっても、割と話す生徒───Bがいた。
 席がAの前なので自然と話す機会が多いのだが───Bは誰に対しても、用事があれば“普通”に声をかける、といったタイプだった。

 ある日のこと───。
 めずらしく、AがBに話しかけてきた。

「ねぇB。一つ頼まれてくれるか?」

 Aから話しかけてくるとはめずらしいと思いつつ先を促す。

「次の休み時間、そこの窓から外を見ていて欲しいんだ」

 理由がわからなかったが、そんな長い時間でもないというのでBは了承した。
 休み時間───昼休みではなく、授業の合間の時間だ。
 休み時間になると、AはBに「じゃあ、頼んだよ」と言って教室から出て行った。

 指定された窓から外を眺める。
 この教室は四階にあり、眺めは結構なものがある。
 ちなみに校舎は五階建てだ。
 Aとの会話を聞いていたのか、寄ってくる者もいた。
 いつのまにかクラスの半数くらいが何事かと窓を注目していた時、それは起きた───。

 窓の外を上から下に、大きな“何か”が通過───いや、落下していった。

「えっ・・・?」

 ざわめきが一瞬止まり、誰かの悲鳴で時間が動き出した。
 落下したのはAだった───屋上から飛び降りたのだ。

 Aの自殺は定番的な経緯で収束した。
 この事件後、Bは精神的に不安定になっていた。
 あの時、頭から真っ逆さまに落下していくAと目が合ってしまったのだ。

 笑顔で落ちていくAの目と・・・。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 「自殺者と目が合った」というお話の一つです。
 このあと「Aの霊がBに憑いて、潰れた頭で笑いかけている」という派生系もあります。
 怖い話系の漫画に起こされていたものもあったはずなので、割と有名な一つではないでしょうか。

 単純に「いじめは駄目」と言いますが、このお話は傍観している周りも含めて、いろいろな考え方の切り口を見せてくれます。

 Bは被害者だったのか、加害者だったのか───。
 自殺したAもまた、Bに対して加害者だったのか被害者だったのか───。

 では、これにて七十九の語り「目が合った」了。


八十の語りに続く

2010/12/21 初版




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百物語 八十の語り
鈴鳴零言

 さて、今回は真冬のお話です。

 ◆ ◇ ◆

 真冬の北海道。
 真夜中に車庫へと移動する貨物車があった。
 その貨物車に一人の女性が自殺を計る───幸か不幸か、その女性は生き延びてしまった。
 体の上半身と下半身───腹から真っ二つに切断された状態で───。

 普通なら即死に至るだろうが、このときは幾つかの条件が重なってしまった。
 切断された上半身が跳ね飛ばされた際、傷口全体に雪がこびりついたこと。
 これによって簡易的な止血が施された状態になっていた。
 ショック死しなかったのも、寒さで痛覚が麻痺しかかっていたからであろう。

 ───慌てて貨物車を停めた運転士が、確認に降りてくる。
 バラバラにはならなかったものの、一見しただけで死んでいるであろうと思えた。
 上半身に近づくと───上半身が動いた。
 うつ伏せからのっそりと体を起こし、焦点の定まらない瞳が運転士を捉えた。
 運転士はパニックを起こす。
 死体と思っているものが動いたのだ。
 上半身しかないため、腕だけで体を起こしては転び───を繰り返しながら少しずつ近づいてくる。
 その姿を見た運転士は恐怖に囚われ逃げ出した。

 翌日───。
 運転士と女性の遺体が発見された。
 運転士の死因は凍死。
 女性は失血死と判断された。

 発見時、その状況は一体何があったのかと思わせるものだった。
 運転士は小さい鉄塔の頂上にしがみつき、恐怖の表情を浮かべたまま死んでいた。
 女性は上半身だけの体を両手だけで立ち上がり、鉄塔を見上げた状態で死んでいた・・・。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 俗に“テケテケ”と呼ばれる都市伝説の一つです。
 このお話ではテケテケとは呼ばれませんが、もう一つのテケテケ───学校の怪談にでてくる“上半身だけの少女”がそう呼ばれているところから、こちらのお話でもその姿の共通名称になっているようです。

 学校の怪談のテケテケは、主に放課後に出遭い、その姿に気づいて逃げ出すと凄まじい速度で追いかけてくる、というもの。
 両腕を使って走ってくるのですが、その速度は100km/h以上───などと言われています。

 有名なお話ですので、“シャカシャカ”などの名称違いや、背景設定の違いなど、派生系の多いお話です。

 では、これにて八十の語り「テケテケ」了。


八十一の語りに続く

2010/12/29 初版

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