さて、ついに百番目。怪談を期待していた方には申し訳ないですが、解説の拡張版といったものになります。
◆ ◇ ◆
百物語───。
百物語と言えば百話の怪談。
百話目が終わったときに起こるとされる怪奇現象。
そういったものとは別に現実的にどうなんだろう? と疑問を持つ部分があります。
それは蝋燭です。
もっとも有名と思われるのが、百本の蝋燭に火を点け、一話終わるごとに消していくというものでしょう。
百話目が終わり、最後の蝋燭を消したところに怪奇現象が起きるという、一つの召喚儀式です。
しかし、現実に蝋燭が燃え尽きるまでの時間を考慮すると、一話あたりの時間は非常に短い。
例えば、一話当たり一分としても一時間四十分かかります。
時刻を測ることができるように定まった長さを持つ和蝋燭でも、流石に長すぎる。
そこで、幾つかの方法が出てきます。
蝋燭を百本用意するのは変わらず、一話ごとに火を点けていくもの───。
十本用意した蝋燭に火を点け、一話終わるごとに消していき、全てを消し終わったらまた全てに点け直すもの───。
十本用意した蝋燭に一話終わるごとに火を点けていき、全てに火が点いたら、今度は一話ごとに火を消していくもの───。
概ねこんなところでしょうか。
蝋燭を十本ではなく、二十本とする場合や、十の位を表す蝋燭を作っておく場合もあります。
また、蝋燭ではなく、一話ごとに線香を立てるという方法もあるようです。
最後に霊が寄って来ているときの見分け方とされている方法を幾つか。
風もないのに蝋燭の火が揺れる───。
蝋燭の火がやたらと伸び縮みする───。
これは和蝋燭だと尚分かりやすいでしょう。
和蝋燭は基本的に火が横に揺れないという特徴があります。
線香の煙が流れていく方に霊がいる───。
あの世への道標などとされているように、線香の煙に霊が寄ってくるわけですが、不自然な煙の流れをしているときがあります。
仏壇などで一対の蝋燭の片側だけが不自然な揺れ方をしており、さらに線香の煙が寄っていくなどの現象が起きていれば、まずそこには霊が居るのです。
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・・・という、お話。
では、これにて一旦、幕とさせて頂きます。
長きに渡り、お付き合いありがとうございました。
では、これにて百の語り「百物語」了。
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・・・おや、解説の拡張版では物足りない、と。
では、この『百物語』に隠された秘密をお教えしましょう。
あなたは百物語を一気に読みましたか?
それとも巷にある噂───連続で百話読んでしまうと怪奇現象が起こる可能性───を鑑みて、百話に届かないように分けて読みましたか?
前者であれば気にすることはないでしょう。
特に何もなかったのでしょうから。
後者であるのなら、それは───本当に百話に届いていなかったのでしょうか?
振り返ってみましょう。
以下に全ての語りの題を挙げてみました。
1.5人目。
2.学校の七不思議・視覚編(理科室)
3.学校の七不思議・視覚編(音楽室・美術室)
4.学校の七不思議・聴覚編(運動場)
5.学校の七不思議・聴覚編(音楽室)
6.学校の七不思議・時空編(廊下)
7.学校の七不思議・時空編(階段)
8.学校の七不思議・時空編(図書室)
9.学校の七不思議・地域編(短編)
10.学校の七不思議・地域編(短編2)
11.学校の七不思議・花子さん
12.学校の七不思議・七番目の話
13.学校の七不思議
14.チャット中の電話
15.Webカメラ
16.勝手に電源が入るCDラジカセ
17.ラジオ・平家物語
18.おいでおいで
19.心遣い
20.開かずの扉・開かずの間
21.白い腕
22.影が薄い
23.ビデオテープ
24.隙間
25.道路標識
26.エレベーター
27.就寝前に・・・
28.閉まらない窓
29.車の天井に・・・
30.髪の毛・車編
31.合わせ鏡
32.見えてるくせに・・・
33.鞠をつく少女
34.消えた地下室
35.小坪トンネル
36.こいつじゃない
37.古い車
38.呪いのビデオ
39.逆探知
40.ベッドの下
41.とおりゃんせ
42.サッちゃん
43.かごめかごめ
44.雨にまつわる歌
45.実は戦争にまつわるらしい
46.シャボン玉
47.ジプシー・クイーン
48.千駄ヶ谷トンネル
49.千駄ヶ谷・四谷近辺
50.彷徨うホームページ
51.腹切りやぐら
52.手を振る人達
53.ゴールテープ
54.女王のためにつくられました
55.手を合わせる人々
56.少しずつ振り向いている・・・
57.件(くだん)
58.映画で見られる怪異1
59.映画で見られる怪異2
60.映画で見られる怪異3
61.壁の中の黒電話
62.返却依頼の電話
63.風鳴りが聞こえる電話
64.キュルキュル
65.メリーさん
66.彷徨うリカちゃん人形
67.赤いちゃんちゃんこ
68.クラクション
69.髪の毛・風呂場編
70.ビジネスホテル
71.ノック
72.落ちればよかったのに・・・
73.カーナビ
74.赤い目
75.タクシーの話
76.噂の場所
77.噂の場所2
78.ゲームソフト
79.目が合った
80.テケテケ
81.白い手
82.カシマさん
83.話を知るとやってくる
84.真夜中にやってくるモノ
85.おかむろ
86.姥よ去れ
87.ある日の短編メモ
88.手話
89.事故にあったのは・・・
90.敷居を踏んではならない
91.覗き込む看護婦
92.花魁淵
93.お邪魔しまーす
94.夢の中の女の子
95.赤いワンピースの女の子
96.猿の電車
97.お婆さんの捜し物
98.SHINE
99.一人・・・。
100.百物語
なるほど。百の語りです。
しかし───
ところで、序として「春夏秋冬怪談の季節」というものがあったことを覚えておられるでしょうか。
春は「桜の木の下に死体が埋まっている」から怪談の季節というアレです。
あれについて簡単に解説を入れるなら、元々は「戦場で墓標代わりに桜の苗を植えた」という説があります。
・・・と繋げることでしょう。
察しの良い方はもうお気づきでしょう。
序の時点ですでに四つのお話が含まれているのです。
そして各語りにてシチュエーションの違いを挙げています。
それは似て非なるお話となります。
誰もが一度は聞いたことがあるようなお話を選別しただけに、違う派生を知っている、と思い出した方も多いでしょう。
それは個々人が一人語りをしたのです。
つまり───
一つの語りは一話であるとは限らなかったのです。
例え、各語りで一つしか知らなくても、「七不思議」シリーズや「映画で見られる怪異」シリーズは元々複数話仕立てなのです。
さあ、あなたは本当に連続百話に届いていなかったのでしょうか?
そして今、全ての題を流し読みして、話をざっとでも思い出したのではないでしょうか。
話に様々な派生がある中に、話の一部が端折られているものがあることは知っての通りです。
つまり、話の本筋さえ分かれば───、
いえ、派生として考えれば本筋である必要すらなく───、
あらすじだけでも思い出せるだけで、一人語りの百物語は成り立つのではないのでしょうか・・・。
では、これにて・・・。
『百物語』了。
2014/06/10 初版
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