『やよいちゃんと真美ちゃんと全裸ラジオ』
【P】
「フンフンフン♪ わたしの恋はイチゴ味♪」
律っちゃんPに頼まれて、亜美真美ちゃんを迎えに行くようになってからというもの、オイラのミニバンはすっかり社用車扱いでございます。
あ、迎えに行くようになったってのは、飲みかけの缶をペロるとかペロらないとか、パキャッ! アーーーーっ!!っていう例の一件です。
今回、真美ちゃんが正式にオイラの担当になり、デビューとなったため、各方面へ挨拶回りをしています。
レコード会社、収録スタジオ、テレビ局、放送作家、配信会社、ダンスの振り付け師さん、作曲家先生などなど、けっこういるので都内をぐるぐる走行中なんでございます。
面通しも大事な仕事で、デビューの際にはしっかりやっておかないと「本業はタレント?」とか言われてしまうのです。
実は世界でもアイドルがアイドルとしてテレビに出ていられるのは日本くらいなんですが、それでも歌えるとか話が面白いとかタレント性がないとすぐに埋もれてしまうのはどこでも同じだったりします。
あっと言う間にバラドル化したりするのです。
日本ではちょっと汚れる印象がありますが、本当はバラエティーに呼ばれないアイドルの方が世界では少数派なんですね。
奥が深いです。
もちろん、やよいちゃんのプロモーションも同時進行、お仕事絶賛募集中です。
いつまでも派遣労働させてはいられません。
・・・でも、農協関係とかの仕事好きなんだよなぁ、やよたん。
ネギだのリンゴだのを持たせた野菜単品系アイドルにしたら、ランクはぜんっぜん上がらないのに、やよたんだけはずっと幸せな顔をしていそうです。
そんなの困りますYO!
【やよい】
「さあ、みんなで食べよおっよ♪ フンフンフン♪」
【真美】
「兄ちゃんがゴキゲンだと、やよいっちもゴキゲンだ。んふふ〜、仲が良いのう」
【やよい】
「うっうー、亜美ちゃんみたいなしゃべり方になってます」
【P】
「あはは、雪歩さんが出演したラジオだけど、局のディレクターさんが気に入ってくれて、次のレイティングでまたゲストとして呼ぶって約束してもらえたんだ」
【真美】
「それでこんなに機嫌が良かったのか・・・」
【やよい】
「それはすごいれう! ・・・で、レイティングって何ですか?」
【P】
「テレビに視聴率があるように、ラジオには聴取率調査ってのがあってだな・・・まあ、今度じっくり説明してあげるよ」
やよいちゃんはおいらの言葉を信じて、キラキラと目を輝かせていますが、真美ちゃんは複雑な表情をしています。
雪歩さんがどういうベクトルに突っ走ってるから、ソッチ方面のオファーが増えてきているのか・・・やっぱりバレてる?
【P】
「どうした、真美ちゃん?」
【真美】
「・・・。やよいっちはアレ聴いてたの?」
芸能界では先輩の雪歩さんが出た番組を「アレ」って。
ひどいよ、真美ちゃん!
妄想全開世代の耳で聞けるバイブルなんだぜ、アレは! (←おめーもアレ扱いじゃねーか
【やよい】
「聴こうと思ってガンバってたんですが〜〜〜」
【P】
「寝ちゃったの?」
【やよい】
「はい、何か難しいニュースの番組までは聴いていたのですが・・・気付いたら朝でした」
心底、申し訳なさそうな表情のやよたんもカワエエですお♪
ってか難しいニュース番組グッジョブ!!
ハプニング梅山さんの『全裸でやるラジオ』はやよたんや亜美真美ちゃんにはまだ刺激が強すぎます。
・・・
【梅山】
「うっしゃぁ〜! 聴いてるかオマエラ! オレはアイドル萩原雪歩ちゃんの前で全裸になってるゾ!」
【雪歩】
「フ、フ・・・フヒッ、イモがお芋が・・・」
【梅山】
「オマエラもラジオの前で全裸になれーっ!」
【雪歩】
「ひぃぃぃぃぃ」
・・・
眠ってくれて良かったと言えましょう。
【真美】
「アレは衝撃的な番組だったよ」
【P】
「き、聴いてたのか?」
【真美】
「うん、ベッドで亜美と一緒に聴いてた。イヤホン半分こにして」
【P】
「亜美ちゃんも聴いてたんだ・・・」
【真美】
「夜中に大爆笑しすぎて親に超〜怒られたんだから」
大爆笑って・・・。
ま、まあ、年頃の女の子が、あほなオス共の妄想爆発番組を聴いたら気持ち悪いか大笑いするかのどっちかなのでしょう。
亜美真美ちゃんは、やよたんよりもマセた感じもするけど、ランドセル背負ってる女の子に聴かせられる内容じゃないのです。
【やよい】
「そんなに面白かったんですか?」
おいおい、やよたん・・・食いついちゃいけませぬ。
【真美】
「亜美は内容よりも、オロオロしてたゆきぴょんにツボってたみたい。ねぇねぇ兄ちゃん、アレって本当に裸で放送してんの?」
【P】
「ぶっ」
“亜美は”ってわざわざ言ってるあたり、下ネタで爆笑している亜美ちゃんの横で、真美ちゃんはそれなりに内容を理解していたとか!?
た、たしかに大人っぽい感じではあるけど・・・おそるべし!
【やよい】
「え? プロデューサーさんも裸になったんですか?」
【P】
「ぶーーーーーーっ」
【真美】
「なったっぽいなぁ」
【P】
「えっ、ちょっ、そんなワケないだろ、まさか」
【真美】
「・・・」
【P】
「梅山さんも雪歩さんもちゃんと服を着て放送してたさ。まして付き添いのオレが服を脱ぐハズがないじゃないか、ハハハ。だいたいラジオでなぜ裸になる必要があると言うのだっ! わははははは」
【やよい】
「あははは♪ そうですよね」
【P】
「そうだよ! ワーハハハハハッ」
【真美】
「・・・ふーん」
真美ちゃんはジトッとした目で睨めつけつつも、深くは追求して来ませんでした。
バックミラー越しのジト目は怖いんだぜ。
ふっ、だがオイラの高度かつ巧妙な情報操作により、真美ちゃんはMyウソッパチを見抜けなかったようだな。
このところ展開がシリアス路線!? とか、あのPがまともになったとかいろいろと風評被害を受けていたが・・・。
どれだけのネタを送ってきたと思っているのだ・・・ふふふ、オイラはあと10年は戦える。
【真美】
「風邪引かないようにね」
バレてんのかYO!
実際、梅山さんは番組開始と同時に全裸。
ディレクターさんや構成作家さんも番組後半になるとパンツ一枚。
それもアニメの美少女キャラクターがおケツにプリントされてる女児オパンツ&大切な部分がほとんどハミ出しているハイレグおパンティという有様です。
お前らどんだけ変態なんだよ!
その点、オイラは実に爽やかにキメていましたとも。
トランクスを頭に被っていました。
茶聖、千利休の肖像画のごとき高貴さでございます。
さらに股間はネクタイで隠すというエレガントさ。
あんなもんで完璧に隠されてしまうミニマムサイズという奥ゆかしさ。
むほほ♪
オイラもド変態ですがナニカ?
*業界人はこんなんばっかりではございません。
・・・
とは言え、最初こそ固まっていた雪歩さんも番組後半では・・・
【雪歩】
「フヒッ・・・ゆ、雪歩はぁ・・・ふ、ふ、太いのが・・・す、好きです。もっともっとこんもりと・・・も、盛り上げて下さいぃ。はぅぅぅ」
【梅山】
「ええか! ええのんかあああ!? んじゃ、追加注文してもらおうかあああ」
【雪歩】
「太麺、肉、野菜増し増しでお願いしまぁす。もっと盛ってぇぇぇぇ!!」
・・・などとリスナーからのリクエストに応えて絶叫していました。
特に替え歌コーナーの『恋するフルーツ』は最高でしたよ。
雪歩さんの歌声は男子中高生リスナーと一部の大きなお友達の心をわし掴み&ごちそうさまでした。
【梅山】
「エロい○郎ラーメンで注文したら? をリクエストしてくれたのは、練馬区のペロリスト山田、16歳。なかなかいいぞ、この先が楽しみな青年だな。しかも雪歩さんのワキをペロペロしたいとのメッセージ付きで送られてきた。ありがとう」
【雪歩】
「ハァハァ、フヒッ! あ、あんまり美味しくないと思いますぅ!」
うつけが!
おっと失礼。
美味しいのです。
雪歩さんの腋おにぎりを完食したオイラが言うんだから間違いございません。
そりゃもう、美味しいのです。
天にも昇るグッテイストでした。
うらやましいだろ、ペロリスト山田君。
【梅山】
「ラジオの前のオマエラ! もうガマンせずにどんどん出しちゃえよ!!」
【雪歩】
「えっ、出す? 何を出しちゃうんですか!?」
【梅山】
「雪歩さんがゲストで良かったな〜♪ という幸せ気分ですよ。これがガマンできないと魂が抜けてしまうかもしれません」
そのとーり!
オイラのお芋もガマン限界のトロロ汁ですYO!
【雪歩】
「ええっ!? そうなんですか? ガマンしなくていいですぅ」
【梅山】
「さっきの○郎ラーメンで注文する風に言わないと、リスナーは全員死にます」
【雪歩】
「フ、フヒッ!! ガ、ガマンはぁ・・・あ、はぅ・・・か、体にぃ・・・悪いですぅ。だ・・・出しちゃって。いっぱい出してぇぇぇ」
雪歩さん、瞳を潤ませ、耳まで真っ赤です。
「出していいです」と言った時、チラっとブースの外にいるオイラを見たような・・・。
危うく魂(液状タイプ)が出るところでしたよ。
アイドルのクセに何が出るのかちゃんと知ってるんじゃないですか!?
前々から思っていましたが、分かってやってるっぽいんだから、もう穴掘って埋まってて下さい。
【梅山】
「・・・ゆきぽさん」
【雪歩】
「ハイ」
【梅山】
「盛り上がってきたのは番組です」
【雪歩】
「ハ、ハイ」
【梅山】
「リスナーがどんどん出すのはメールやFAXですがナニカ?」
【雪歩】
「フヒッ!?」
【梅山】
「おや? ゆきぽたんは何だと思ったんですか? まさか本当に魂が出るとでも?」
うまいっ!
完全にセクハラエロトーク全開なのに、まるで雪歩さんだけがエロい妄想をしているかのように誘導するテクニック!!
ナイス梅山さん♪
さすがですよ、黒縁めがねでぽっちゃりし過ぎはダテではございません。
本人は本人でドヤ顔してますが、この人全裸です。
【梅山】
「な〜に〜が〜出ると思ったんで〜す〜か〜」
【雪歩】
「あ、あ、穴掘って埋まってきます〜」
もはや完璧な流れですよ。
深夜放送にしておくのはもったいないくらいのクオリティです。
まあ、深夜でしか流せないクオリティとも言えますが・・・。
【梅山】
「それじゃ雪歩さんも調子が出てきたので、本日のメインディッシュ! 替え歌コーナー行くぞ!」
【雪歩】
「メインディッシュ???」
【梅山】
「いつもはリスナーからの替え歌を俺が歌ってるが、今日は特別に雪歩さんが歌ってくれるぞ! 実用性バツグン! まさにメインディッシュ!! おかずにしちゃえよオマエラぁぁぁっ!」
キターーーーーーー!
深夜ラジオのお約束。
流行している歌の歌詞をこれでもかというくらいにお下品にアレンジする、伝統あるコーナーです。
中高生の性の失敗談をカミングアウトする童貞あるあるコーナーに並ぶ2大人気コーナーと言っても過言ではありません。
【雪歩】
「おかず・・・。私が歌えばいいんですね。がんばりますぅ」
【梅山】
「今回の課題曲は雪歩さんのヒットソング『恋するフルーツ』だ」
【雪歩】
「ありがとうございますぅ♪」
【梅山】
「これは恋に焦がれる少女の想いを甘酸っぱいフルーツに例えた青春応援ソングだ!」
【雪歩】
「この曲はとっても大好きなんですぅ♪」
うほっ♪
ゆきぽたん可愛いですな。
こうやって普通にアイドルしている雪歩さんが魅力的なので、お下品なアレンジが非常に映えてくるのです。
まずはふつーに原曲が流されます。
ブース内では(相変わらず全裸で)水をガブ飲みしている梅山さんと、ニコニコして楽しそうに自分の曲を聴いている雪歩さん。
曲が流れている間は休憩のようなものなのです。
ブースの外では、女児パンツとハミ出しパンツが難しい顔をして、ヴォリュームレベルの調整や、CMの準備なんぞをしています。
恰好さえ見なければプロの姿ですよ。
ガラスの内と外では、音楽が流れている間の忙しさがまったく違ったりするのです。
ちなみにかかっている『恋するフルーツ』はオリコソ上位に入ってくれました。
歌唱力と可愛い声でドルヲタ(アイドルオタク)には相当な人気があるようなのです。
これイイ曲なので、オイラもよく車で聴いています。
内気な女の子がまだ見ぬ恋人を想って、そっとレモンを囓ってみるという歌詞です。
この一行で表せる内容を、一曲分に膨らませる作詞家先生はスゴイですね。
雪歩さんは今日、一番の笑顔で歌を口ずさんでいるようです。
【梅山】
「さいたま市、雪歩ちゃんが出したお茶を飲みたいさん、37歳からの投稿から行くぞ」
【雪歩】
「出した? 淹れたお茶じゃなくて・・・???」
さっきまでの笑顔が一転。
意味を理解したのか、この上なくやるせない表情でこちらを見ております。
うおー。
見ないでけろ〜。
脳内パーフェクトコミュニケーション発動してまうやろ〜。
「うふふ、飲みたいですか?」
「はい」
「それじゃ、お口を開けて・・・」
おほぅ!
直飲みですか!?
おっとけしからん妄想に耽ってしまいますた。
ハッ!?
蔑むような目でゆきぽたんがこちらを見ています!
以心伝心かああああああ!?
でも、なんか怒ってるというよりも、こういう顔で見られたいんでしょ? 的な小悪魔っぽい表情のような・・・。
【雪歩】
「お茶・・・飲みたいんですね・・・」
飲みたいです!
超飲みたいですっ!!
テラ飲みたいDEATH!!!
大事なことなので3回言い(ry
【梅山】
「雪歩さんが深刻な声になっちゃったじゃないか。ラジオネームに文句を言うのもアレですが、37歳のオッサンは少し自重して下さい。ラジオの前にいる中高生のオマエラ! 世の中には知らなくてもいい世界があるからな。あくまでもノーマルな変態でいてくれ」
変態の時点でアブノーマルだYO!
まったくこの全裸パーソナリティはよぉ。
【雪歩】
「♪あなたのバナナと私のマンゴー
シロップとろとろからませて 上からたっぷりヨーグルト
いっぱいかけてね フルーツポンチ♪」
【梅山】
「オッサンよくやった! オマエラ出せ出せーー!!」
【雪歩】
「うっ・・・穴掘ってうまってますぅぅぅ」
・・・
い、いかん。
思い出しただけでMyバナナもパーフェクトコミュニケーション寸前です。
【真美】
「・・・最初の30分くらいしか亜美は聴いてないよ。あんまりうるさいんでラジオ没収されちゃったから」
【やよい】
「うー残念です・・・そんなに楽しい番組だったんですね」
【P】
「たまたま良い回だったってだけだよ。普段は聴かなくていいからね」
【やよい】
「さすが雪歩さんっ♪」
【P】
「ま、真美ちゃんは替え歌とかは聴いてないんだね」
なんか真美ちゃんのジト目が痛いです。
【真美】
「うん、聴いてないよ、亜美は」
亜美は、ですか。
ソーデスカ。
真美ちゃんは全部、聴いてしまったんデスネ。
【やよい】
「うっうー、せっかくの出演だったのに雪歩さんのラジオ聴けなくて申し訳ないれう」
【P】
「ハハハ(ぜんぜん申し訳なくないゾ!)」
【やよい】
「その替え歌コーナー気になりますぅ」
【P】
「ハーッハッハ(ぜんぜん気にしなくていいゾ!)」
【真美】
「・・・どうしても気になるなら、ポストキャストという便利な・・・」
【やよい】
「えっ♪」
【P】
「ケフンケフン! あ〜真美ちゃん?(よけーな事は言っちゃダメだYO!!)」
どこまでも純真なやよたんに心の中で土下座しつつ、真美ちゃんにアイコンタクト。
頼むからやよたんを汚さないでくれ〜〜〜。 (←真美ちゃんはいいのかよ
【真美】
「ほら、兄ちゃん! 前! 前! 信号、赤だよっ!」
【P】
「おおっとおぉぉぉ! アブナイアブナイ」
もちろん赤信号には気付いていたんですが、ワザと大げさに言ってくれたのは、話を逸らすよ〜という真美ちゃんの意思表示のようです。
本当に気遣い派の真美ちゃんです。
ええ子や・・・。
【やよい】
「うっうー! プロデューサーさん!」
【P】
「ゴメンゴメン。今は運転に集中しようかな、ハハハ」
ぜんぜんコワくない顔で「メッ!」とコワい顔をしてくるやよたんはやっぱりかあいいです。
いずれは2人にも、ああいう番組に出演してもらう予定ですが、それはもっとずっと先の事。
まずはそれぞれの個性に合った仕事をこなしてもらう事が大切だと思っています。
ピュアだったり、真面目だったりするキャラクターを確立してこそ、崩す楽しみが出るのだと思っています。
ただエロいだけの女の子がエロい事をしても面白くないんですよ、きっと。
近年、アノ手の業界で素人物がウケているのはこのあたりに極意があるのだろうと思い、徹底的にリサーチ(鑑賞とも言う)しております。
学ぶ事がたくさんあったお仕事でした。
13話後編に続く
2012/09/11 初版
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