取調室というよりも会議室のような大きな部屋に、僕とむぎむぎは立っていました。
ここは地元の警察署です。
もっとも、最寄りは駐在さんだったので、地元と言ってもかなり距離があります。
時刻はうっすらと夜が明けてくる頃。
僕達が隠し通路を出ると、近づいて来るパトカーと消防車のサイレンが聞こえてきて、助けられたのです。
洋館は全焼、そしておそらくは4人の遺体が出たはずです。
山田さん、その娘さん、駐在さん、銀行強盗の犯人の1人。
普段は静かな田舎町で、これだけの大事件になれば取り調べも受けるというもの。
僕達は病院で治療を受け、4時間ほどしてから警察署に護送されました。
制服を着ている警察官からは事情聴取を受けませんでした。
最初、狭い部屋に通されそうになったところを、スーツを着ている人がやって来て止めたのです。
この会議室を借りるというなり、他の警察官を下がらせました。
1人だけで手帳になにやら書き込みながら、3人で立ったまま、事情を聞かれたのです。
刑事さんが質問してきて、後ろには制服警官が記録を取る。
そんなテレビドラマを見てきた僕には意外でした。
「なるほどねぇ…それを全部、信じろってわけか?」
刑事というより、兵士に近い体格をした男性がニヤけながら聞いてきました。
どっかりと会議テーブルに腰を降ろして、タバコに火を点けます。
おいしそうに煙を吐き出してから、タバコの先を僕達2人に向けて、眉を上げます。
“吸う?”って感じで。
僕はてっきり、むぎむぎがとても信じられない状況、つまり傀儡兵などについてを、伏せて話すものだと思いこんでいたので、全てをありのままに話したのは驚きでした。
頭がおかしいと疑われそうな話ですよ!
最悪、銀行強盗の仲間と思われるかも…。
僕がでっちあげにならない程度に、非常識な部分を隠しながら説明しようとしていたのですが、目の前の刑事さんは聞いてくれませんでした。
会議室に入るなり、ビニール袋に入った黒こげの拳銃を見せて、
「これは何だ?」
と聞いてきたのです。
「それは駐在さんの…」
「ニューナンブM60。.38口径装弾、官用リボルバーで5連発。撃鉄直下にも弾は入っていたのか、5回発射されました」
刑事さんは、しばらく僕とむぎむぎを見比べてから、ニヤリと笑い、
「そっちのお嬢さんが詳しく話してくれそうだな」
と言うなり、僕が何を話そうとしても「黙ってろ」と取り合ってくれなかったのです。
(19)に続く
2014/03/25 初版
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