あれから、むぎむぎは休講分を取り戻さなければならず、自主参加の時間外講義などをしてスケジュールの穴を埋めていたようです。
僕はむぎむぎの穴を埋めたい…いえ、あの刑事っぽい男性が言ったそっくりそのままが報道されたのを確認し、社会の裏側を覗いたような気がしておののいてました。
ちなみにデータディスクを渡す時、むぎむぎにもったいぶって、
「ねえ、むぎむぎ。よく考えてみなよ」
「うん?」
「確かにあれだけの量の古文書とかが燃えちゃったのは、大きな損失になると思うよ。でもさ…」
「本当に重要なものは耐火金庫とかに入れておいたと思うよ」
「…(ガーン)」
格好良くいきませんでした。
あれから、1週間。
久しぶりに彼女に会いましたが、1週間と1日前の彼女そのものでした。
何も変わってない。
何も起きなかった。
そう錯覚するほど、いつも通りのむぎむぎでした。
僕にとってはショックの連続だったのに、むぎむぎがさっぱりしているのはスゲーと思います。
「ねぇ、のぶちん…今度のお休みにお墓参り行こうよ」
「いいよ、ずっと休みで暇してるし」
誰の? とは聞きませんでした。
僕も言い出そうとしていたので。
“山田さんの娘さんのだよね…”
むぎむぎが僕を見て、ニコニコしています。
「でね、近くに北条家の隠し砦があるんだけど…」
僕の彼女は、相変わらずの戦国時代マニアです。
「僕の彼女は戦国マニア」完
2014/05/20 初版
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