学校から帰ってきましたら、部屋にマーニャさんがおりました。
勝手に冷蔵庫を開け、大根やらタマネギやらを食べ散らかしておりました。
ほうれん草を食べても体力が回復しないと怒っています。
そして、僕が帰って来たなり、こう言い放ったのです。
「おなかすいたんだけど!」
これは一体どういうことなのか。
まったく理解は出来ないんですが、美人のマーニャさんが眉間にシワを寄せて仁王立ちしている姿はとても美しいです。
はい。
きわどい衣装サイコーです。
・・・殴られました。
怒っているマーニャさんを見てニタニタ笑っていたのが気に食わなかったそうです。
「おなかすいたよー!!」
ゲームのキャラクターでもお腹は空くようです。
不思議ですね。
仕方がないので、近所のラーメン屋さんに行きました。
来々軒です。
ビンボー大学生が通っているお店ですから味よりも量で勝負です。
「すっごい、いい香り」
「でしょー、大盛りチャーハンがおすすめだよ」
さっきまでと、うって変わって、マーニャさんは超ゴキゲンです。
しょうゆで煮染めたようなのれんをくぐり、いつものカウンター席へ。
「よっ、まいど!!」
ケンドー・コバヤシ似の胡散臭いオッサンです。
いつもの店長でしたら続けざまに
「何にしましょ」
と来るはずなのに、いつまで経っても注文を訊ねてきません。
それどころか目が点になっています。
「お、おい伸夫ちゃん」
伸夫って言うのは僕の名前です。
天空の勇者ノブチンこと鴨川伸夫です。
体重が108sのため、あだ名はデブちんです。
2浪1留の大学2年生、23歳、童貞。
2浪1留だったら22歳だろ、というツッコミは無用。
実は高校時代に出席日数が足らず、1度ダブっているのです。
まあ、僕のデータなんかどうでもいいですね。
「誰だいその外国人女性は。借金のカタに偽装結婚でもさせられた?」
失礼な!
たしかに僕は彼女いない歴、年齢と同じの非イケメンですが、犯罪は立ちションすらした事がない善良な市民なのです。
我慢できずに漏らしたのは罪にはなりませぬ。
たぶん。
「妻のマーニャです」
・・・殴られました。
お前の妻になった覚えはないと怒っています。
何となく親しい仲だと理解してもらえたようです。
「まさか伸夫ちゃんに外国人の彼女がねぇ。・・・で、どこのパブの娘なんだい、フィリピーナ?」
マーニャさんはフィリピン出身ではありません。
コミーズの村の出身です。
国で言ったらキングレオ王国です。
こんな事をラーメン屋のオヤジに言っても仕方がないので、曖昧に頷いて流してしまいます。
そんな事よりさっさと注文を聞けです。
ハシを使わなくても大丈夫なように、今日はチャーハンを2つ頼みました。
「あいよっ、伸夫ちゃんは大盛りサービス。アニータちゃんには玉子スープサービスだ」
アニータではありません、マーニャです。
たしかにマーニャさんはラテンの人っぽいですが、チリ人ではありません。
ていうか、僕にもスープを付けろと言いたいです。
「すごく美味しー」
マーニャさんの顔がキラキラと輝いています。
聞けば、どこの宿屋もロクな食事が出ないのだそうです。
なので、もっぱら酒(ワイン)を飲んでカロリーを摂取していたそうです。
マーニャさんの体が心配です。
ギョーザとビールを追加注文しました。
「何これ、すごい美味しー」
キンキンに冷えた生ビールは、マーニャさんの心にクリティカルヒットしたようです。
ほんのりとホッペが赤くんった、マーニャさんすごくカワイイです。
大満足で鼻歌を歌いながらアパートに帰宅です。
そして、いよいよ、僕の童貞をマーニャさんに捧げる時がやってきました。
失礼がないように、しっかりお風呂に入って、僕は準備万端です。
ちなみにマーニャさんはコンビニで買ってきたポテトチップを片手に発泡酒をグビグビやっています。
お風呂に入ってもらっている間におぱんつ様を見せていただこうと目論んでいた訳ですが、入浴より発泡酒に夢中のようです。
まあ、これはこれでよしとしましょう。
入浴前の少し汗クサイ女性の香りは僕にとって憧れであり、魅力的なものなのです。
マーニャさんのワキの下をペロペロしたいと切に願います。
というかもうガマンできません。
マーニャさんに抱きつくと、その唇を一気に奪います。
・・・殴られる、と思ったのですが、パンチは飛んで来ません。
それどころか、マーニャさんの方から舌を絡めてくるではないですか。
カンゲキです。
女性の唇はこんなにも柔らかかったのですね。
マーニャさんは体の力を抜くと、僕に身を預けてきました。
これは、求められています。
男としてやらなければならない時があるとすればまさに今です。
「マーニャさん、明かりを消した方がいいですか?」
「いーよ、このままで。マーニャの全部をノブチンに見て欲しいな」
感動です。
エスタークを倒した時よりも、デスピサロを倒した時よりも嬉しいです。
ゆっくりと服を脱いでいくマーニャさんのふっくらとしたおっぱい、くびれた腰、そして、一番見たかったマーニャさんの大切な場所・・・。
ですが、どうしても見えないのです。
気付いてしまいました。
これは夢なんだと。
知らない部分は夢でも見えないのですよ!
気が付くと、僕はスンスン泣いていました。
悲しい、悲しすぎる夢です。
でも、しっかりと夢精はしていました。
完
2012/02/14 初版
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