吊り橋を渡った1人と1匹は、この状況を岩陰から見ていた。
スカッド・リーダーが倒れた事で、パーティーはすでに1/4。
全滅しかかっている。
ドスファンゴが激昂しているので、かなり危険に見えるが、ディックスは大イノシシの動きを見極めていた。
パーティーはほとんど倒せる状態にまで痛めつけている。
あと一太刀かそこら。
総攻撃を仕掛ける事が出来たなら、もしかしたら倒れているのはドスファンゴの方だったかもしれない。
ディックスは指で地面に絵を描き始めた。
「いいか、俺達の場所はここ、鉄砲担いだお嬢さんがここ」
「はいニャ」
「デカい牡丹鍋の具がここだ」
「ドスファンゴ?」
「物知りだな」
「ニャ♪」
ゴリゴリと地面に絵を足していく。
「このまま俺達は突撃して戦闘区域に入る。嬢ちゃんとドスファンゴを直線にして、その間に一人ずつ割り込む形だ」
「はいニャ」
「ドスファンゴを中心に、俺達は前後に展開する。もちろん前は俺だ」
「ボクはドスファンゴのお尻ニャ」
「その通り」
このアイルーは飲み込みが早く、頭も良いとディックスは思った。
戦闘前に素早く指示を出した場合、言った事をただ復唱してくるのはお供アイルーどころか、人間だって多い。
覚えるのに精一杯なのだ。
アイルーはこの状況で知識の引き出しまで開けてきた。
戦闘前にまったく緊張していない。
これは逸材だった。
あとは罠の設置能力だ。
見知らぬ猫人族をどこまで信用して良いものか。
場所・設置速度の重要性はもちろん、普段のメンテナンスを怠っていれば、不発に終わる事も考えられる。
電撃パルスの発生装置は、単純な原理で作動するが、構造は複雑だった。
「ドスファンゴがひっくり返ったら、その場で電撃罠を仕掛けてくれ」
「任せて下さいニャ♪」
「頼もしいな。行くぞ」
「ニャーっ!」
(8)に続く
2013/05/22 初版
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