最近のファミレスは喫煙席が空いている場合が多い。
コアタイムはともかく、深夜になるとそれが顕著になるようだ。
海外並みに分煙化が推し進められ、たいていの屋内で禁煙になった昨今、オフィスでもタバコを吸いづらくなった為、俺は香りしかしない電子タバコに切り替えた。
ヘヴィスモーカーの自覚はなかったが、日に3箱は吸っていた俺はスーツも車内も指も髪もいかにヤニだらけだったのかを思い知らされたものだ。
切り替えたのが、有毒物質を9割以上カットし、副流煙ではなくエッセンスしか出ないと謳われている電子タバコとは言え、フィルタから吸って、口から白いもくもくを吐き出していればタバコにしか見えないと思い、普段から喫煙席に案内してもらう事にしていた。
ファミレスの例に漏れず、この店はロクに分煙されていない。
喫煙者は奥で、手前の禁煙席には直接、煙が流れてこないという程度だ。
ガラス張りの隔離はおろか仕切りもないので広々とした店内に見える。
俺はいつものドリンクバーとペペロンチーノをダブルで頼んだ。
他の客は窓際でノートパソコンを開いている女性だけだった。
禁煙席の方には学生風の男性が2人いて携帯ゲームに興じている。
店員もどこかのんびりとした立ち振る舞いだ。
これだけ客が少なければ当然かもしれない。
料理が運ばれてくるまで、俺はぼんやりと走行計画を立てていた。
計画と言っても大それたものではない。
パーキングエリアまで行って、バナナオレを飲んでとんぼ帰りという、ある意味では贅沢な、ドライブ好きじゃない人からはアホかと思われるような道中だ。
走る前に100円ショップで駄菓子を買おうか、山ほど音楽が入っているMP3プレイヤーの何から流そうか、行きは区役所前を走っていればそのまま高速だが、帰りは少し下(一般道)も走ろうかなど、とりとめのない事ばかりである。
だが、この時間が楽しいのも確かで、今晩中、それもまだ暗いうちに家へ帰って寝るはずなのに、旅行の前の日みたいなわくわく感があった。
(5)に続く
2018/01/30 初版
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