0時半を過ぎ、アドホックで盛り上がっていた禁煙席の二人がいなくなった。
何となく眺めていたら、ちょっとそこらで見ない巨乳の持ち主だった喫煙席の女性もいなくなっている。
べつに胸ばかりを見ていたわけではない。
イカスミパスタを注文して、真っ黒い口紅をしているようになっていく彼女をぼんやり見ていた…いや、視界にたまに入っていただけだ。
薄いピンクのチューブトップで目立つのだ。
目が覚めるような青いスカートも目を引いた。
それだけだ。
食べるたびにぷるん。
ノートPCに何事かを入力するたびにぷるん。
ぷるんぷるんしながら、唇が真っ黒な悪魔になっていくのだから、ちらちら見てしまっても仕方がないというものだと思わないか?
男性諸氏なら分かってくれると思う。
女性陣には言っておきたい。
男なんてこんなもんだ。
草食系男子についてはさっぱり知らないが、取り立てて肉食系じゃなくとも、眼が綺麗だの、髪がどうの、オシャレな服だねだの、「俺ってひんぬーが好きなんだよね。なんかさ、巨乳好きってマザコンっぽくね?」とかほざこうと、視線はだいたいこんなもんである。
せっかくだから、もうひとつ断言したい。
たいていの男は最初、優しくて金持ちだ。
メッキが剥がれるまでの時間は、そいつの精神力と経済体力による。
意外なほど剥離が早いから、飾り立ててる奴には気を付けろ。
飾り立ててない奴はおダサいことも多々あるから、まあ、自分でコーディネートしてやるがいい。
いつまで経っても、優しくて金が尽きなかったら、勝負の賭け時だろう。
己の全てをそいつにぶつけて陥落させるのだ!
これまでの努力は相手を通り越し、いずれ遺伝子を受け継ぐであろうまだ見ぬ子に引き継がれるチャンスだ!
はっきり言っておくが、見てくれなんか関係ない。
どうせ人は老いる。
確実に劣化していくものに投資する奴は頭が悪い。
その時点で先読みできない、薄っぺらな男だと思っていい。
ま、あれだけぷるんぷるんに釘付けだったから説得力がないかもしれないが…。
だが、俺は独身貴族をこれ以上ないくらいに満喫しているが、これは妻帯者である会社の先輩が語ってくれた人生訓だ。
ぜひ、参考にしていただきたい。
閑話休題。
店で一人になった俺は、店員さんが食器を下げてくれたのを機に、関東を縦断する高速道路の最初にあるPAについて、ぼんやりとネットで検索していた。
パサール。
スマート・インターチェンジ。
そうした単語が連なって出てくる。
特にめぼしい新情報はなかったので、やはりバナナ・オレでも飲みながらのんびりとしよう。
もちろん、全てのウィンドウを全開にして。
そんな事を考えていると『さくおか』というワードが引っかかった。
近くにある店舗?
オススメ・スポット?
老舗の小料理屋か何かか?
俺はクリックしてみた。
(7)に続く
2018/02/13 初版
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