「自由にネットに繋げられるって言っても、やっぱり学校だからゲームには使っちゃいけなかったんだって。まあ、当然よね」
「当然でしょうね。俺が学生の時はLL教室ってのがあったんですが…」
「何ソレ? 視聴覚室みたいなもの?」
「似てますね。ランゲージ・ラボの略で外国語を習う時にたまに使ったんですよ。一人に一台ずつコンソールがあったんですけど、USBでMP3プレイヤを繋げれば音楽が聴けました。もちろん禁止でしたが」
最近はほとんど使わなくなったそうだが、一応、時代に合わせて設備は進化しているのだと後輩から聞いた事がある。
何期も前の先輩はカセットテープの時代もあったそうだ。
「へぇ…」
「リスニングや生徒の発言とか発音を共有する為に、オープンにする事も出来ましてね。かなりイタイ奴が大音量でAK-B47を流して騒ぎになった事もあったなぁ…」
「何なの、その自動小銃みたいな音楽は」
「ああ、1947年製のアブトマット・カラシニコフを持った、昭和47年生まれのババアが47人いるご当地アイドルですよ。今は研修生や海外組も入れると軽く130人を超えてまして、もっさりした歌と踊りを楽しめます」
実を言うと、俺はこのグループのCDを全部、持っていたりする。
もちろんDVDもだ。
ものすごくファンというわけではないが、幼稚園の頃に好きだったみっちゃんに似ている子がいるので気になりだした。
無料動画サイトから音源だけを抽出するという限りなくグレーゾーンな方法で曲だけをMP3に入れ、車のFMトランスミッターに繋いで流していたらうっかりファンになっていたという小物だ。
ディープな大物ファンになるとCDに入っている大根引換券───イベントでメンバーから直接ダイコンを手渡してもらえる───を目当てに数百万円分も購入し、そのまま農家になったという猛者もいるのだから、俺なんかはファンと言えないレベルだろう。
「…」
「半田っていう元タクシードライバーがプロデューサーなんですけどね。このぽっちゃりメガネが言うには、特殊部隊で4〜5番目くらいに可愛い子を集めたっていう“会いに行けるスペツナズ女子”ってのがコンセプトだそうです。知りません? 『撃ちたかった』とか『ヘビー・コマンドサンボ』とか『フライング腕ひしぎ逆十字』とかけっこう売れた曲も…」
「知らないから」
「それじゃ今度、セカンドDVDを貸してあげ…」
「いらないから」
「練馬文化センターのつつじホールを満席にした伝説の神回ですぞ!?」
「口調までヘンになってるから!」
ちっ!
冷ややかかつドルヲタ(アイドルオタク)を見るような目をしやがって。
お前みたいに可愛いと絶対にAK-B47には入れないんだからな。
イカスミスイカ女め。
(13)に続く
2018/03/27 初版
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