「でね、どんなに学校側が禁止しても隠れてゲームをする生徒はいたらしいのね。ある時、休み時間中にゲームをやっているところを先生に見つかって没収された生徒がいて、親に報告されたらしいの」
「授業中じゃなかったのがせめてもの…」
「それが、家だとうるさく言われるから学校でやってたらしいのよ」
うわぁ…。
最悪の展開になったわけだ。
俺も家庭用のゲーム機に関しては、毎回きちんと箱に入れてしまうこと、一日に一時間だけなんて約束事があって、ずいぶん面倒な思いをした。
携帯できるゲーム機は数種類出ていて、クラスメートはやれモンスターがどうの、ヒトカリイク? なんて話してて羨ましかったが、在学中はついに買ってもらえないどころか、小遣いで買うのも禁止されたっけ。
思い出に苦い顔をしていると、彼女も共通の思いがあるらしく、“まあ分かるよね”というような表情を浮かべた。
「その子の親は思いきった事をしたらしいの。先生からバラされた生徒は家でもどこでもゲームは完全に禁止。今、持ってるゲーム機は全部、捨てられちゃったって」
「直情的な親ってたまにいますよね」
我が子の携帯ゲーム機をまっぷたつに叩き折ったバイオリニストのSNSが賛否両論で、ちょっとした話題になったのを思い出した。
曰く、自分が一生懸命に働いて買った物。
どうしようと自分の勝手だという思いがあったのか、監督責任は自分にあるのだと言いたかったのかは分からないが、働いてお金を稼げない年齢の子供に買い与えたのは親であり、それに夢中になる子供側の気持ちも何となくは分かるしで、難しい問題だとは思う。
ただひとつだけ感じたのは、それが何であれ、子供が大切にしているものを目の前で破壊するのは決して良い影響にならないだろうという漠然としたものだった。
「いきなり捨てなくとも、何かルールを作るとかできなかったんですかね。最悪、絶望しちゃうんじゃないですか」
「したのよ」
「?」
「絶望のあまり自殺しちゃったの」
「げ…」
(16)に続く
2018/04/17 初版
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