俺が絶句している間に、彼女は淡々と語った。
飛び降りか、首吊りという噂は流れているものの、事実の公表は未成年という事で警察も学校側もしなかった。
つまり、俺が学生時代に聞いた急行電車への飛び込みは別件か、この当時の噂に人身事故が重なって派生したデマだったというわけか。
事件自体は有耶無耶になったものの、二日間の臨時休校があり、その間に現場検証をしていたのではないかというのが噂の続きだ。
学校側はひたすらにこれを隠蔽した可能性が高い。
イジメの事実はなく、家庭環境に問題もなかった為、受験ノイローゼか何かか?
そんな扱いで、メディアも対して追いかけず、すぐに他のニュースで埋もれてしまった。
しかし、生徒の間で噂は絶えなかった。
今も噂が続いているのは、今も“ソレ”が続いているからだという。
相変わらず続くWi-Fi環境の不正使用は生徒達の間で、公然の秘密になっていたのだが、ある時を境に妙なラグが発生したり、めちゃくちゃな文字が羅列されているだけのメールが届くようになった。
ラグというのはタブレットやゲーム機で何か動作しようとした際に起こる遅延時間の事だ。
「重くなった」だの「処理落ちか?」などという会話が聞こえたら、だいたいがこのラグが発生していると思っていい。
この現象は謎の臨時休校があったちょうど50日目からというのが、ネットで分析をしている者達の共通見解だ。
これには薄ら寒くなった。
休校初日が命を絶った日だとすれば、数々の現象が発生し始めたのは四十九日目にあたる。
“四十九日法要”をご存じだろうか?
仏教においては、故人が亡くなってから7日ごとに法事や法要がある。
この7日ごとに閻魔大王による裁きが行われ、極楽浄土に行けるかどうかの裁定が下る日が49日目と言われているのだ。
そう、その生徒は成仏できなかった可能性がある。
(17)に続く
2018/04/24 初版
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