当初、学校側はその噂にまったく耳を貸さなかった。
内密にはしてある。
全校集会などできちんと説明もしなかった。
ただ、この区域のある学校で自殺した学生がいるというだけ。
そして、臨時休校のあと、なぜか一度も登校してこない生徒がいるだけ。
妙に勘ぐりたがる好奇心旺盛な生徒達が作った都市伝説、学校の七不思議、怪談程度に考えていたのは確実だろう。
だが、ある日、午前中の授業がすべて自習になるほどの長い職員会議が開かれ、その後、休み時間ならWi-Fi環境を使ってもよいという解禁に至る。
これも噂の領域を出ないが、教職員用の掲示板に“ナニカ”が書き込まれたのではないかという線が濃厚なのだそうだ。
校舎裏の花壇の隅にはなぜか花束と当時、流行っていたゲームが供えられたのだという。
何の説明もなく、取ろうと思えば取り放題のゲームはどんなに荒れている生徒でも持ち去ろうとはしなかったらしい。
これは噂ではなく、事実と言い切れる。
彼女は言った。
俺が質問するまでもなく、彼女は言葉を継いだ。
「今でも人気のあるゲームが出たら供えられているからよ」
それなら決定的だろう。
グループチャットをしていると見知らぬ誰かが入ってくる。
SNSのコメント欄に意味のない文字の羅列が書き込まれる事がある。
仲間を誘ってクエストに出かけるタイプのゲームに繋ぐと、常にロビーにいる“ダレカ”がいる。
その学校に通う生徒なら、誰でも一度は耳にする噂であり、おそらくは体験済みの生徒が多くいるはずだ。
(18)に続く
2018/05/01 初版
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