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学院騎士 サンガイオン (8)
大和武尊

 昼休みに、放課後になったら説明する、噂は全面的に間違っていると藤原先輩を説き伏せて、教室から出て行ってもらった為、オレは授業が終わるとすぐに部室へと向かった。

 ちなみに静ちゃんのお弁当は豪快なのり弁だった。
 醤油に漬したであろう引きちぎれた海苔が、ご飯の間に3段になって敷かれており、中央には梅干しが埋め込まれていた。
 これが1つ。
 もう1つの弁当箱にはドレッシングが大量にかかっているシーザーサラダが山ほど入っているだけ。
 いや、足のちぎれたタコさんウィンナーや、昆布の煮付けが数本、ハンバーグの欠片、ちくわの天ぷらっぽい残骸、つぶれた肉団子なども入っていた。

(材料の余り?)

 ちらっとそんなことも思ったが、この構成はなかなかに腹に溜まるものがある。
 味付けも濃過ぎず、薄過ぎずでナイス!
 実に満足のいく昼食が摂れたのだった。

 部室棟の階段を上がって、PM研究会の部室に入った。

「失礼します」

 部長と藤原先輩はすでに来ていた。

「やあ、山本君。今日は君の噂で持ちきりだったよ。斬鉄剣でリムジンを2つに割ったら、中から見目麗しいお嬢さんが出てきたんだって?」
「そのバージョンは初めて聞きました」

 藤原先輩が吹き出しそうな顔をしながら、3人分のコーヒーを淹れてくれた。

「お、やっとコーヒータイムだ」
「そうなんですか?」
「そうなんだよ。藤原君は君が来ないと淹れてくれな・・・」
「部長、カタログでも読んでて下さい」
「そうさせてもらおうかな」

 さりげなく部長の言葉を遮った藤原先輩の目が氷のような冷たさをしているのを見て取るなり、部長は最新型プリンターのパンフレットを読み始めた。

 カサ・・・カサカサカサ・・・。

 ちょっと手が震えている気がする。

「それで、山本くん? 説明してくれるって言ったわよね?」
「はい」

 先輩がオレのすぐ隣に腰を降ろす。

「私が確認しただけで10種類くらいの噂があったけど・・・」
「おそらく全て事実と異なると思います」
「そうなの?」

 隣から覗き込んでくるようにこちらを見ていた先輩が、ちょっとだけ安心したような顔をした。

「そうそう! 校門に侵入しようとした量産型モビルスーツを君が1人で撃破したという噂もあって・・・」
「部長はコーヒーでも飲んでて下さい」
「タケル、行きまーーーす!って・・・」
「部長っ!」
「はい」

 カタカタ・・・カタカタカタ・・・。

 部長の持つ手が見て分かるほど震えていた。
 あまりに不憫なので、気が付かないフリをしつつ、オレは先生達にしたのと同じ説明を先輩にもした。

「そういう事だったのね」
「はい、お騒がせしてすみませんでした」
「昨日の子?」
「へ?」
「御前さんだったかしら」
「あ、ああ、そうです」
「ふ〜ん・・・やるわね・・・」
「え?」
「何でもないわ」

 先輩はそう言って微笑んだ。
 何かつぶやいたのが気のせいだったと思えるほどだ。

「僕は信じていたよ」
「部長・・・」
「君がブラックホールの中央で永劫の眠りについている旧支配者と指ずもうをしていたというあたりで、すぐにおかしいと気付いたからね」

 そこまでコミカルな話に発展するまで気が付かなかったんかいっ!
 それはともかく、部活は通常通りに行われた。
 部長は何やらぶつぶつと呟きながらパンフを眺め、藤原先輩は静かにブ厚い本をずっと読んでいた。
 オレはP乙P版のモソスターハソターに興じるといういつもの部活風景だ。

 途中、オレのケータイに静ちゃんからメールが入った。

<タケルくん、ごきげんよう(絵文字)
 ごめんなさい! 今朝、渡したお弁当(絵文字)は私のだったの(絵文字)
 おいしくなかったでしょう?
 お昼休みにお弁当箱(絵文字)を開けたら、
 タケルくんに渡すはずのお弁当が入ってて・・・(絵文字)
 本当にごめんなさい!
 すぐに蘇我さんに届けてもらおうと思ったんだけれど、
 今日は往復分のガソリンしか積んでない(絵文字)と言われてしまったの(絵文字)
 明日はちゃんとタケルくんの分を渡します(絵文字)
 タケルくんに嫌われていませんように(絵文字)(絵文字)(絵文字)
 それではごきげんよう(絵文字)>

 か、感動だ・・・。
 あちこちに絵文字が入っているという、こんなに女の子女の子したメールをもらったことなんか1度もない。
 驚きなのは静ちゃんが、オレのメールアドレスを知ってたって事・・・。
 オレのケータイには静ちゃんのアドレスがそのまま表示された。
 要するにオレは彼女のアドレスをアドレス帳に入れてなかったって事だ。
 そういや、オフクロ以外に女性からメールもらったこと自体が初めてだった。

 う〜む、やっぱりあの弁当は材料の余りだったのか。
 それを捨てずにちゃんと自分で食べようとしていたなんて、静ちゃんはどこまで素敵なんだ!
 めちゃくちゃ量が多いあの弁当を平らげてしまうあたり、文武両道を地で行くお嬢様らしいじゃないか。
 嫌ってなんていませんよ〜ん♪

 ってか、蘇我さんは蘇我さんでギリギリの燃料しか積んでないって、どこのタイムアタックですか・・・。


(9)に続く

2012/08/07 初版

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