「山田さん、どうして?」
あ。
むぎむぎが先に出ていってしまいました。
髪は乱れ、幾分、三白眼になっている山田さんは、台所の包丁で拳銃とベルトを切り離しています。
「とんだジャマが入ったが…ようやく全てが揃いましたよ。君達、いや塚原先生には感謝していますよ」
お、オイラは塚原先生を連れてきたのに…。
むぎむぎ、何とか言ってやっておくれよ。
「山田さん、話を聞かせてもらっていいですか?」
あ、無視ですか。
そうですか。
「もちろんです。塚原先生は秘法を教えて下さった張本人ですからなぁ」
山田さんはまだ銃口から煙りが出ている拳銃を下に向けて、語り始めました。
「最愛の娘を難病で亡くしてから、私は彼女を蘇らせる事を人生の目的としてきたのです。
何もかもを投げ打って!
分かりますか、この悲しみが。微笑まれるだけで幸せだった相手が、動かなくなった時の気持ちがっ!
私は全てを費やした。
そして、妖しげな術や書物を読み漁るうちに、明治時代にこの洋館によって行われていた実験を知ったのです。
全財産を叩き、この洋館を買取り、資料も集めた。古文書、必要な材料、海外から魔導書も取り寄せた。
手段など選びませんでしたよ。
しかし、どのように使うのかがわからなかった! こんなにいまいましい事はないっ!!」
山田さんは興奮気味に怒鳴り始めています。
銃を振り回して話している人が目の前にいるというのは、生きた心地がしません。
むぎむぎ、そろそろ、そ〜っとおいとましませんか。
これ以上はオイラ達も危ない気が…。
「あの冷凍庫の中身は…もしかして」
あ、聞いてないんだね。
まだお話しするんだね。
「私の娘だよ。冷凍庫じゃない、氷の部屋だ!」
「…」
「私は娘が生き返るのなら何でもすると誓ったのだ!!」
「気持ちは分かります」
「ふうふう、分かってくれますか…ふふふ。それでは手伝って…」
「無理です。死者が再び甦る事などあり得ません」
ちょ! おまっ!!
山田さんの今までを全否定って!
(13)に続く
2014/01/01 初版
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