あれは中学生時代の夏休みの出来事です。
その日、私は同じ文芸部で仲良くなったIちゃんの家に、はじめて泊まりに行く事になりました。
アニメを見たり、Iちゃん秘蔵のBLマンガを読んだりと楽しく過ごしました。
Iちゃんの部屋には二段ベッドがあり、私はその夜、ベッドの上段を借りて眠る事になりました。
真夜中、私達がぐっすり眠った頃。
突然、私の携帯電話に着信がありました。
親くらいしか、かけてくる相手がいなかった私は、半分寝ぼけて「なーに、ママ」と電話に出ました。
すると、相手は幼い女の子の声で
「ごめんね、夜中に…」
と、話しかけてきました。
私
「え、誰?」
相手
「あのね、Iと仲良くしてね」
私
「うん、仲良くしてるよ」
相手
「ありがとう」
それで電話は切れました。
変な電話ですよね。
Iちゃんのお母さんや、もしいるなら歳の離れたお姉さんみたいな内容です。
二段ベッドがあるし、お姉さんがいるのかな?
それに、まるで金田○子さんみたいな声。
わかった、お姉さんはもう大人で声優さんなのか…サインもらおう。
めっちゃ眠かった私は、バカな納得をして、そのまま朝まで寝てしまいました。
朝ご飯をご馳走になっている時に、その話をすると、IちゃんとIちゃんのお母さんは青ざめました。
あまりにも真っ青なので、私も恐くなりました。
ひょっとして、二段ベッドの上を使っていたのはお姉さんで、もう亡くなったのかも!?
夏休みですから、お盆の時期でしたし、よく「帰ってくる」という話を聞きますし・・・。
着信履歴を確認しようにも、通話記録はありませんでした。
でも、はっきりと覚えているので、寝ぼけた私の夢ではないと思うのです。
私が考え込んでいると、Iちゃんとお母さんが教えてくれました。
Iちゃんが小さい頃に、よく電話がかかってきて、出ても幼い子の笑い声が聞こえてくるだけだったり、突然、停電になることもあったそうです。
真剣にお祓いをしてもらおうかという話が出た頃、ぱったりとその現象が止んだのだとか。
ご家族はやはり心霊現象の類だったのではないか、お祓いをするっていう話をしたから、恐くなって出てこなくなったのだという結論になったということでした。
幽霊も恐くなるなんてことがあるんだなぁってご家族が笑っている中、Iちゃんは当時、身体に変化があってそれが原因じゃないかって思っていたそうです。
ちなみに二段ベッドはいつも上に寝ていて、普段は下の段を物置にしているということでした。
その後、Iちゃんに電話はなく、私もそれっきり。
夏の終わりになると、思い出す出来事です。
“霊が電話をかけてくる”
何らかの思い残しがあって、能動的行動(電話をかけてくる)を起こすという地味に強烈な定番のひとつです。
何故、地味に強烈なのか?
それは電話の呼び出し音は普通に電話として機能している、ということです。
霊感といったものを必要とせず、物体に干渉して発生している現象。
これがどれだけ強烈かはわかっていただけると思います。
今回の体験談では、少々めずらしい点がひとつ。
子供の頃にかかってきていた電話は固定電話だったということだそうですが、時代と共に携帯電話に変わったというところでしょうか。それも友人への。
特定の場所で起きる現象の場合、“個人”や“家族”であったり、“性別”限定などの特定条件型、無差別に“建物・部屋に入った者”といったようなものはそれなりにお話はあるものです。
でも、そういったものとは少々違った括りだけにめずらしいと言えるでしょう。
他にもこの体験談には幾つかの定番が見られます。
2段ベッドの上、または下で云々というのも定番のひとつです。
派生としてはロフトが寝室になっているものも含まれます。
この体験談ではベッドの上になりますが、いわゆる霊道が近い場合が多いことがその理由になるようです。
なぜ霊道が近いのか?
ヒントは神棚の高さです。
神棚のすぐ下の高さは救いや導きを求めた霊が溜まりやすく、神棚から神棚などといった道ができやすい条件が揃っているということです。
そしてまた、本文では暈していますが一次性徴や二次性徴がきっかけで能力が発言したり消失したりというのも定番になります。
短い中に複数の定番が見受けられ、なるべくして起きたとも取れる霊体験と言えるでしょう。
<解説:鈴鳴零言>
1談目了
2013/12/24 初版
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