さて、今回は鎌倉のある場所です。
◆ ◇ ◆
昔、この地に東勝寺という、北条氏の菩提寺があった。
1333年、鎌倉時代末期に、北条高時を始めとする、北条一族と家臣が自刃した地である。
今も東勝寺は跡地として残っている。
そして───その跡地に「腹切りやぐら」と呼ばれるものがある。
名前からして“何かある”と思わせるには十分なものであり、やはりというべきか、幾つかの噂が伝わっている───。
「(夜・夜中に)腹切りやぐらに行って、家に帰ると、まるで切腹でもしたかのように、服に血がべっとりついている」
「腹切りやぐらを覗いていると、上から首が切り落とされる」
「この辺りに家を建てると、夜、武士の亡霊にうなされる」
「夜中、コップに水を入れて外に出しておくと、朝には無くなっている」
───などがある。
城址跡でよく聞かれる噂や、戦地跡にある噂は大体共通する。
だが、それは噂が広がっただけでは無く、共通の想いが、その地に染み付いているからではないだろうか・・・。
◆ ◇ ◆
・・・という、お話。
心霊スポットとしては、夜中には行ってはいけない、という場所に挙がる一つだったと思います。
「服に血がべっとり───」というのは、夜中に行くと起こりやすいらしいとか・・・。
昼間でも「帰ってきて、家族に指摘されて驚いた」なんて話もありますので、昼だから安全ということでもないようです。
軍記物語「太平記」によると、自刃したのは北条一族283人、家臣870人となっているそうです。
詳細を知るなら「元弘の乱」から調べると良いかと思います。
では、これにて五十一の語り「腹切りやぐら」了。
五十二の語りに続く
2010/10/01 初版
|