『スターへの道』
前回のローカル路線バスの旅は大成功でした。
関東テレビファンの幅広い年齢層にも支えられ、日曜日のゴールデンタイムに視聴率も10パーセント越えを果たしました。
さすがにMHKさんの超河ドラマには及びませんでしたが、同時間帯民放トップを獲得です!
これはけっこう大事だったりするのです。
MHKさんは公共放送なのでCMが入りません。
要するにスポンサーがいないって事です。
まあ、いらない、とも言えますが。
逆に民放で時間帯別視聴率のトップを取れたって事は「数字に繋がる」アイドルだってことになるので、スポンサードをしようって考えてくれる出資者が増え、CMの仕事も入りやすくなってくるのです。
本当にファンの皆様には大感謝でございます。
・・・
【律子】
「ちょっと、視聴率10パーセント越えって本当なの!」
【P】
「まあ、今回は裏番組にも恵まれてたから」
【律子】
「亜美真美をバラバラで売り出したいって言い出した時には、なんでわざわざって思ったけど・・・やるわね。裏番組が手強かったら、出さなかったんでしょ?」
お、律っちゃんPもスルドイです。
実はそう思ってました、てへっ。
【亜美】
「ぬわーんとビックリだぁ」
おぬし、どこの生まれじゃい!
アイドルが平気で、妙なイントネーションで話しちゃいけないって律っちゃんPにたしなめられてますよ。
【亜美】
「しかも今度、始まる深夜アニメの主題歌も真美なんだよね?」
【P】
「ああ、真美なら武田先生の所にミーティングにいってるよ。デビュー曲からいきなり良いタイアップをもらえたんだ。これも旅番組の効果かな」
車に同乗したディレクターさんが、この改編期から深夜帯アニメ枠の編成局へと移動になったのでございます。
「まだOP(オープニングテーマ曲)が決まってないので、どうですか?」なんて声をかけてくれました。
ありがたや、ありがたや。
これは好機! とばかりに、多くの声優さんや、アニメソング中心に歌ってるアーティストを集めて行われるオーディションに、真美ちゃんにもチャレンジしてもらったのです。
もちろん、出来レースではないですよ。
ディレクターさんは水を向けてくれただけで、アニメのプロデューサーさんが納得してくれなければ、その話は流れてしまうところでした。
そのまま、ディレクションとプロデュースサイドが疎遠になってしまうなんて事も日常茶飯事らしいですが、真美ちゃんは若干、アニメ声という事もあり、危なげなく受かりました。
【律子】
「いきなりタイアップって・・・」
おや?
律っちゃんP、メガネがズリ落ちてますよ〜。
ふっ・・・オレだってプロデューサーの端くれ。
カードの強さを把握して、勝てる勝負に出るくらいの駆け引きは出来るのれす♪
特に双海真美ちゃんのデビュー曲に関しては、亜美ちゃんや律っちゃんPとも綿密に打ち合わせを行い、あえてジャンルを被らせないようにもしていました。
声も顔も似てる(←そもそも双子だし)ので、それ以上、被ったら共倒れになるような気もしますしね。
亜美ちゃんは元気路線、子供向け番組で人気が出ていました。
そこで真美ちゃんには作曲家の武田蒼一先生に頼んで、お友達で流しのサウンドクリエーターであるつなちん氏を紹介してもらったのです。
もともとヴォーカロイドソフト歌音ミケを使って、テクノ系の楽曲をネット上で発表していた人です。
そのつなちん氏の協力で、武田先生の力強いダンス系ミュージックはクリアでクラブ感のあるナンバーにアレンジされています。
ちなみに歌詞は多才な事でも知られるアニソン系シンガーKOTONEさんにお願いしました。
ハープシコードのような歌声で大人気の彼女ですが、歌詞のみの提供も快く引き受けてくれたのです。
武田先生の人脈フル活用です。
・・・
【P】
「すみません。何かと頼ってばかりで」
【武田】
「わからない事はわからないとはっきり言ってくれるから、こっちも早く対応できるよ。スケジュール管理だけしているマネージャーではなくて、共に作品を創っていくプロデューサーってのは気持ちがいいね。思い付いた事は何でも言っていいからね」
【P】
「ありがとうございます」
【武田】
「それにしても、何はなくとも数字を求める冬本君とは真逆だなぁ」
【P】
「生まれたてホヤホヤのアイドルに数字は取れないと思ったもんですから・・・武田先生のサウンドは学生時代から聴いていて大好きなんですが、あえて素人離れしているとは言え、素人さんの編曲を加えてもらいました。すみません、ダメ出しするようなマネをして・・・」
【武田】
「いや、それは構わないんだ。実に時代に合ってると思って驚いたんだよ」
【P】
「・・・」
【武田】
「私のサウンドは完成品だと褒められたような気になってね。最初から編曲を入れるって事は、初出から2次創作のアレンジバージョンで出そうってわけだ。思えば真美君も双海亜美っていうレーベルのアレンジバージョンみたいなものだから、ネット創作全盛期の今に合ってるよ」
【P】
「そう言っていただけると助かります」
【武田】
「もうね、分かっているんだ。それでも私を立ててくれているだろう? おそらく“オリジナルバージョン”である編曲前の私の曲はKOTONEさんがカバーすると見たね」
【P】
「あの・・・実はそのようにさせていただこうと、真美がリリースしたら相談に伺おうと思っていました」
【武田】
「真美君が歌うにはキーが低いのに、君は何も言わなかったからね。いや、こちらも試すような事をして悪かった。君は私を前にして「聴きたい曲にしてもいいか?」って言ってくれた。数字じゃない。耳に心地いい曲を提供するのが私の仕事なんだ! 君はそれを手伝ってくれたんだよ」
【P】
「おそれいります」
【武田】
「ハハハ、おそれいらないでよ。あの曲に関してはどのようにでも使ってほしい。プロデューサーは君だ」
【P】
「ありがとうございます!」
【武田】
「だが、印税だけはやらん」
【P】
「わはははははは」
そんな会話があって、武田先生とは意気投合したのであります。
プロの仕事場がこんなに清々しいものだと分かったのは初めてですし、何より、プロデューサーだと認めてもらえたのがめちゃめちゃ嬉しくて、思わず帰りにアキバで美少女フィギュアを大人買いしてしまいましたよ。
・・・
【亜美】
「ぐぬぬ・・・亜美は1年以上も活動してきてようやくEランクに到達したというのに、なぜ真美はデビュー1ヶ月でDランクなのだ。プロデューサーの腕の差か?」
【律子】
「気分悪くするわよ」
【P】
「まあまあ。真美ちゃんには最初から、アイドル双海亜美の妹というアドバンテージがあるからだよ。それにDランクって言っても、雪歩さん、やよいちゃんとのユニットがあって、ファン数が重なっているから多く見えるんだよ」
【亜美】
「そーなのか?」
【P】
「そりゃそうだよ。アイドルとしての実績も実力もまだまだ亜美の方が上だよ」
今のところは・・・だけどね。
【亜美】
「なるほどなるほど。亜美が真美に負けてるわけじゃないんだ」
【P】
「同じプロダクション内で勝ち負けを競っても意味ないぞ。真美ちゃんが有名になれば、亜美ちゃんにだって仕事が来るし、亜美ちゃんが頑張ってくれると、真美ちゃんも注目される。これがナイスな相乗効果ってやつだ」
【亜美】
「おおっ、兄ちゃん。スゲー頭のいい人みたいだ!」
【律子】
「・・・確かにそうかもね。亜美にも、真美に負けないくらいガンガン仕事入れてあげるわ」
【P】
「おっ、よかったな亜美ちゃん」
【亜美】
「ぐむむ、ヤブを突いてスケジュールが増えた・・・たちけて」
ぷっ、アホめ。
だが、この天真爛漫さこそが亜美ちゃんのウリになるので、律っちゃんPはあまり怒らないであげてほしいところです。
・・・
さて、真美ちゃんのデビュープロジェクトと平行して、やよいちゃんの新曲プロジェクトも順調に進んでいるのです。
テレビ、ラジオ、雪歩さんのお手伝いと忙しくなってきたスケジュールの合間を縫って、ダンスレッスンに通う日々なのです。
テレビ出演でギャラが増えたやよいちゃんにとっては、ようやく自分に対して投資をする余裕が生まれてきました。
この前、MHKの楽屋で会った573プロ専属のダンストレーナーにして振り付け師のまゆゆさん(年齢不詳)は、とても厳しい方ですが愛情を持ってやよいちゃんにアドバイスをくれます。
【まゆゆ】
「まず体力があるって事は、最近の子達と比べて高槻さんにとってはプラスの材料ね」
【やよい】
「うっうー、ありがとうございます」
【まゆゆ】
「素直なところもプラスね。だけど踊らされてる感があるうちはダメだからね。練習量が圧倒的に不足しているわ」
【やよい】
「うっうー、すいませんれぅ」
【まゆゆ】
「どんなにセンスがあっても、バテてしまったら台無しよ。疲れは動きのキレだけじゃなくて、歌も音程が外れて来るし、笑顔も引きつってくるから可愛さも台無し。でもね、練習不足は必ず克服できるから、一緒に頑張りましょう」
【やよい】
「はいっ!」
まゆゆ先生の厳しいダンスレッスンに必死でついていくやよいちゃん。
だんだんとアイドルの表情になっていくから不思議なものです。
原石というのはこうやって磨かれていくのでしょうか。
“らしさ”ってのは大事なんだなあ、なんて思っていると、会った時から存在がアイドルだった春香さんに声をかけられました。
【春香】
「プロデューサーさん、お疲れさまです」
【P】
「春香さんお疲れさまです。今日はレッスンですか?」
【春香】
「えへへ。今日はやよいの新曲について打ち合わせですよ、プロデューサーさん。まゆゆ先生から連絡をもらってたんですよ」
自分だってハードスケジュールだろうに、あれから何かというと春香さんはやよいちゃんが歌う新曲のために協力してくれています。
【春香】
「ふふふ、いい歌を歌うためには作り手の気持ちが分からないといけないですから。これは私にとっても良い勉強なんですよ」
トップクラスの人は、アイドルでも他の分野でもこうして勉強熱心なのでしょう。
うう、オイラももっとマネジメントや音楽の勉強をしなければ・・・。
でも、春香さんの脇おにぎりも食べてみたいなどと不届きな事を考えてしまう自分が憎いです。
ニクイニクイ!
憎ったらしいんだよぅ、おめーはよ!
そんなオレが大好き♪
だって、ニコニコしている春香さんが可愛いんだからしょうがないじゃないですか。
でも、オイラは知っています。
その微笑みの下に、半目の閣下がいる事を・・・。
油断したら魂を吸い取られます。
気を許せばアルコールを吸い取ってる人です。
お酒はハタチになってから!
えっちな動画は18歳になってから!
みんな、オイラとの約束だぜ(キラーン)
あ、まゆゆ先生が来ました。
近くに来ると、意外にぜえぜえ言ってるのが分かります。
やよいちゃんはケロっとして、まだ自主レッスンしてるというのに・・・。
せんせ、歳か?
いや、この場合、やよたんの体力が化け物じみているのかもしれません。
【まゆゆ】
「天海さんはどんなに仕事が増えても、必ずレッスンに来るの」
【P】
「おおっ! それは素晴らしいですね」
【まゆゆ】
「そして、誰よりも長く練習していくの。今の高槻さんはよく似てるわ」
【P】
「デビューしたてのやよいちゃんと同じくらい!?」
【春香】
「だって、私、ダンス苦手なんですもん。段差のない所で転んじゃうほど運動神経ないんですから」
要バリアフリーですかい!
春香さん、歳か?
いや、この場合、人知を超えた運動オンチなのでしょう。
春香さんの姿をミラーで見つけたやよいちゃんが、スタジオから出てきました。
やっぱり呼吸が乱れていません。
【やよい】
「やっぱり春香さんはすごいれぅ」
会話が少し聞こえたんでしょう。
目を輝かせてソンケーの眼差しで見てます。
ところが、やよいちゃんとオレにだけ見せる、半目で少し怖い春香さんに・・・。
【春香】
「いいこと、やよいちゃん。努力をウリにしてるうちはプロじゃないわよ。レッスン量なんて自慢にはならないの、ひどい言い方をするとレッスンなんてしようとしなかろうと本番で完璧なのがプロよ」
【やよい】
「!」
その言葉、オイラの胸にも刺さりましたよ。
こんなに頑張ってます!
すっごい苦労してます!
そんな努力は、いつか失敗した時に「あれだけ頑張ったんだから失敗しちゃってもいいよね?」って自分を甘やかす言葉にしかならない。
当然のように失敗なし、当然のようにいつも輝いてる。
それがプロ。
磨くのに苦労したんだね、すごいねーって褒められたいなら、親兄弟や好きな人にだけ甘えてればいいの!
イイ?
春香さん、すげーです。
言われてしゅんとするでもなく、目一杯、手を握りしめて「はい!」って返事してるやよたんがまたかわゆいのですよ。
【春香】
「忙しくなればレッスンの時間確保さえ難しくなるしね」
【やよい】
「はい!」
【春香】
「ふふっ、やよいはいい子ね。でもね、だからこそ今は納得するまで自分を試してみるといいと思うわ」
もうね、何て言うかね。
やよたんの汗を拭いてあげちゃいましたよ。
まゆゆ先生に過保護だと怒られましたよ。
もちろん、そのタオルは鞄にしまいましたよ♪
・・・
やよいちゃん、真美ちゃん以上に忙しい人もいます。
今や、テレビを付ければ雪歩さんが映っているというありがたい事になっているのです。
流行に乗ったというのはこういう状態なんですね。
まさに時の人。
ありがたや、ありがたや。
【白い兄】
「オトーサン、ユキーホがカレシに電話シタイから、ガクセータダ割引に入りたいようデース」
【黒い犬(おとーさん)】
「雪歩にはまだ早いっ!」
【雪歩】
「お、お父さんゴメンなさい。ダメダメな私なんか穴掘って埋まってます〜〜」
【チャイルド店長】
「すいません、お姉さん。お店の床に穴開けないで下さい。というわけで穴を掘らないでも学生なら電話がかけ放題サービスが始まったようです。以上、チャイルド店長でした」
もはや、何が何やらわからないCMですが、四六時中、放送されていれば定着してしまうものらしいです。
ちなみに隕石が追突しそうになるのを、雪歩さんが地球に穴掘って通り過ぎさせるバージョンもあります。
スコップ1本です。
しかも地球を貫通してるし!
「不器用ですから・・・」って言って、穴に落っこちるラーメン屋もいるし!!
なんだかんだ言って、長いシリーズのCMに出られるあたり、さすがは時の人。
シャンプーのCMなどにも出ています。
ついには超長寿お笑い番組「笑転」にも出演しました。
人気のお笑い芸人さん達に混じって前座の大喜利に参戦です。
これはバラドルの中でも快挙です。
麦助師匠の兄弟子であり、今や関東落語協会の会長にして長老の桂家歌角師匠と共演ですYO!
この人、オイラが子供の頃にはすでにじいさんだったんですが、未だにじいさんです。
生命の神秘ですよ。
【雪歩】
「整いましたっ!」
【歌角】
「お、雪歩さん早い。では、どうぞ」
【雪歩】
「はぎわらゆきぽとかけまして〜」
【歌角】
「自分にかけちゃったと。はい、萩原雪歩さんとかけまして」
【雪歩】
「唐揚げとハンバーグと解きます」
【歌角】
「その心は」
【雪歩】
「男子中高生に人気のおかずですっ! フヒッ、フヒヒ」
【歌角】
「・・・」
【雪歩】
「あ、あの・・・」
【歌角】
「自分にかけちゃった上に、おかずって・・・雪歩さんのざぶとん一枚持っていきなさい」
【雪歩】
「はぅぅ、穴掘って埋まってきますぅ〜」
【歌角】
「かけて、掘って、おかずって! ウチの下ネタはごゆぅーざだけだったってのに、まったく・・・おーいコジマ君、ざぶとん全部持ってって」
【雪歩】
「ふえええええん」
雪歩さん、あなたって人は・・・。
そのうち謎じゃなくて、液かけられますよ!
ってか、その座布団下さいYO!
おっと、また悪い癖が出てしまいました。
・・・
担当アイドルの仕事が増えれば、当然おいらの仕事量も増えるわけで。
【美希】
「あ、プロデューサーさん」
【P】
「よお、珍しいね。こんな時間まで」
夜の事務所で書類の片付けをしていると、今はブレイク寸前のスーパーアイドル星井美希ちゃんに声をかけられてしまいました。
相変わらず、ティーン♪ と来るハイパーオーラを放っています。
たいていの女性は可愛い系か綺麗系かに分かれるものですが、美希ちゃんは可愛くて綺麗だから反則ですよ。
【美希】
「ミキね、まだあきらめてないよ」
お?
キラキラした瞳で見つめられてしまうと、どうにかなってしまいそうです。
<プロデューサーさんなら・・・>
【P】
「え? 何?」
何か聞こえたような?
【美希】
「・・・ミキ、ずっと何のために生まれてきたんだろうって思ってたの」
【P】
「そりゃ、難しい悩みだね。いきなりどうしたの?」
【美希】
「この国に帰って来て、全部、白黒に見えちゃったんだ」
どうしたんでしょう。
えらく深刻な顔をしています。
【美希】
「何かってば群れてて、皆おんなじじゃなきゃ安心できない人達。変わってる人はいる場所がないでしょ」
【P】
「そ、そりゃ、そういうところはあるなぁ」
オレもずいぶん学生時代は浮いてたもんね。
ただの変わり者ってかイタイ人扱いされてたわけだけど、ほとんど気にしないオレでさえ自覚があるんだから、帰国子女の美希ちゃんはなかなか周囲にとけ込めなかったんでしょう。
感受性が強い彼女なら、よけいに辛かったかもしれません。
【美希】
「それでね・・・」
【P】
「うん?」
【美希】
「それで・・・」
【P】
「芸能界で活躍する人はけっこう元ヤンとか多いみたいだよ。ハグレちゃうのかもしれないね。極端に格好良かったり、可愛いってだけで、ひがみ光線の的になるんだよ」
【美希】
「うん」
【P】
「でも、美希ちゃんは可愛さも魅力もどんだけ出したってOKな業界に入ったんだから気にすることないって」
【美希】
「・・・芸能界でも頑張ってる意味が分からなくなる時があるよ」
そんなに努力しなくても、美希ちゃんならブレイクするだろうしなぁ。
努力の実感ってのがないのかもしれない。
【美希】
「それでね・・・」
<ミキ、プロデューサーさんの事、ハニーって呼んでいい?>
【美希】
「プロデューサーさんに会った日からは、世界がカラーになったんだよ」
ウホー♪
そんなニコニコ顔で、そんな事言われたらニヤケてしまうじゃありませんか!
モノクロからカラーですよ。
あと一歩で地デジ化ですYO!
【美希】
「あは♪ ミキはこの人と会うために生まれてきたって直感したんだよ」
地デジ化キターーーーー!
プロデューサーとしてのオレの才能を見抜いてくれてたんですねい。
頑張ってきた甲斐があったってもんです。
会った日は頑張る前でしたが、そこはそれ。
美希ちゃんの直感力はすごいのですよ。
【P】
「ありがとう」
【美希】
「えっと、そうじゃなくて・・・やよいがいても構わないから」
【P】
「ほえ?」
【美希】
「プロデューサーさんにとって、やよいがどれだけ大切なのかもわかっちゃうから・・・。でもね、少しでいいからミキの事も見ていて欲しいの」
あ、ティーン♪ と来ました。
“見ていてホシイの”ってキャッチフレーズでCM取れるかもしれません。
星井美希ちゃんですからね♪
やっぱテレビがいいでしょうか。
ずっと見てて♪ って感じの商品がいいですよね。
【美希】
「・・・」
【P】
「どした?」
【美希】
「ミキ、いっぱいお仕事してお金も稼ぐよ。もし、トップアイドルになれたら社長にお願いするの。プロデューサーさんを私の担当にしてって。そう決めたの」
【P】
「いつも担当になりそびれちゃってごめんな」
【美希】
「ううん、ミキ、アイドルを続ける理由が出来たの」
な!?
こ、これは驚きです。
アイドルを辞めたいってところまで悩んでたんだとしたら、もっと早くに気付くべきでした。
そこまで苦しんでいたとは・・・。
続けてくれるみたいだし、オレも頑張って名うてのプロデューサーにならないといけません。
いやいや・・・担当にならなくても相談くらいには乗れるんだから、もっと彼女の事を気にしていよう。
アイドルがどうのってのは置いといても、女の子が悩んでるなんて見ていられないですからね。
<そうじゃなくて・・・そうじゃないの>
ん?
あ!
さっきから聞こえていた気がするのは・・・。
<真剣な顔で遠くを見ないで。こっち見て、さみしいよ>
これって美希ちゃんに会った時に聞こえた、彼女の心の・・・。
オレの心だって、考えてみれば彼女には筒抜けだったんだ。
<ねえねえハニー、こっち向いて!>
オレ、生まれてから初めて、誰かに必要とされてるんだ。
それがプロデューサーの仕事として楽しかったんだ・・・。
・・・。
【美希】
「・・・」
【P】
「分かった。美希ちゃんが誰もが認めるトップアイドルになった時には・・・その、オレも決断するよ」
【美希】
「うんっ♪」
ひ、ひ、一人の男として必要とされてるか分からないしな。
落ち着け、オレ!
告白されたわけじゃないんだから!
学生時代は鵜呑みにしてはひどい目に遭ったし、そもそもこんな可愛い子に好かれるなんてありえないし。
つーかオイラ変態だし!
ハハハ(泣)
いいんですよ。
必要とされるのって嬉しいんだから。
それが分かっただけでも生きてて良かったんだから。
・・・
そのあとはもう何の書類を書いてたんだか分かりません。
美希ちゃんとの会話もうろ覚えで・・・って完全に舞い上がってるのかオレ!?
プロデューサーとして嬉しかったのか、男として嬉しかったのかもよく分かりません。
家に帰ってからも、セルフバーニングしないという数年に一度の珍事でございます。
こ、これが・・・。
これが本当のパーフェクトコミュニケーションなのか!?
あ〜、ウチのアイドル全員の顔が浮かんできました。
そんな気はしてたんですよ。
本当ですよ。
皆が笑顔で言うんです。
<そうだよ♪>
16話に続く
2012/03/27 初版
|