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モンスターハンター3RD・SS 〜笑顔の靴下〜 (12)
大和武尊

 ドスファンゴとまだ気絶しているリーダーを、ガーグァ2羽で引く大型荷車に固定し、荷台の横にはエミリアが腰掛けた。
 あとは出発するだけになっている。
 すぐ目の前にはアイルーが立っており、一緒にディックスを見上げていた。

「ベースキャンプの場所を御者に伝えてくれ。“いつもの場所”なら、特に言わなくていいそうだ」
「いろいろとありがとう」
「ダンニャサン、いろいろとありがとうニャ」

 アイルーもぺこりとお辞儀した。

「アイルー、夢は捨てるなよ」
「はいニャ♪」
「助かったよ、きっと良いお供アイルーになれる」

 ディックスは、アイルーの小さな手を握って握手した。

「射手」
「エミリア」
「じゃあ、エミリア。弾切れには注意しろ。捕獲用麻酔弾に弾倉交換する前、ボルトが開いていた。それさえ気をつければ、間違いなく名射手だ」
「肝に銘じとくわ」

 ディックスは御者台に向かって叫んだ。

「行ってくれ!」

 ギルド御用達の御者が手綱でグァーガを促すと、荷車がゆっくり動き出す。

「またな」

 ディックスが背を向けて、元来た吊り橋に向かって歩き出した。
 荷物を取りに戻るのだろう。
 その後はまたユクモ村へと向かうはずだった。
 振り返る様子はなかった。

 少しずつ動き出す荷車の上から、エミリアがアイルーに声を掛ける。

「一緒に行かなくていいの?」
「・・・」

 さっきの物言いだと、同じ方向に帰るはずだ。
 だが、アイルーは動かなかった。
 ぶるぶると肩を奮わせ、ただただディックスの後ろ姿を見ていた。
 平然とお別れをしたように見えたが、無理に我慢していたのだろう。

「ネコちゃん?」

 横顔が見える所まで荷車が移動すると、アイルーは大粒の涙をぽろぽろと流していた。
 缶をぎゅーっと抱きしめて。

(まったく・・・)

「フニャっ!?」

 腕を伸ばして小柄な身体を引っ張り上げる。
 アイルーはエミリアの膝の上へと収まっていた。

「な、何をするのニャ?」
「無賃乗車」
「そんなのダメニャ!」
「いいから! 名案があるの」

 顔を涙でぐしゃぐしゃにしたアイルーに向かって、名射手はウィンクした。


(13)に続く

2013/07/30 初版

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