「礼堤学院って知ってる?」
「れいてい…学院ですか。昔、米軍基地だった…」
「そう。基地のあとで大きな公園に変わった、あの近くの」
名前だけは聞いた事があった。
確か、俺が学生だった頃、急行列車に飛び込んだ生徒がいるとかで噂になったところだ。
雨が降っていると日頃、自転車で通う連中がこぞって電車通学に切り替える。
ただでも人が増えるのに、湿度は100%なのだから不快指数は頂点に達する。
おまけに電車が待てど暮らせど来ないという最悪な状況で「人身事故により…」とアナウンスが流れた時には“最悪ってのは簡単に更新できるんだな”とぼんやり思ったものだ。
その時に礼堤学院の生徒がいくつか前の駅で飛び込んだらしいという会話が聞こえてきたのだ。
押しくら饅頭状態のホームで突っ立っている以外には、会話ぐらいしかできないのだから、噂はあっという間に広まった。
その後も同校の噂を何度か耳にしたが、いずれも良くないニュースだった気がする。
ありがち過ぎる。
それどころか、ちょっと古い感じがした。
今時、学校での怖い話や都市伝説、怪談なんて現役の学生が修学旅行の夜にだってしないんじゃないか?
「IT化の一環で、今の学生はタブレットなんかを授業で使うんだって。それでWi-Fiでネットに繋げられるようになってるらしいのよ」
「校内にホットスポットがあるんですか?」
「そう。この投稿も学校内から」
すごい時代になったものだ。
学校でネットに繋ぎ放題もすごけりゃ、学校から匿名のつもりで送った投稿がしっかりバレているという状況もすごい。
直接的なイジメはもちろん、SNSのテキストチャットでの陰口やイジメが問題になるのも分かる気がした。
良くも悪くも時代はデジタルなのだ。
(11)に続く
2018/03/13 初版
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